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よみがえる昔の日本の光景 ネットで楽しむ古写真

2007年05月06日13時32分

 幕末や明治時代の日本の光景が、手元のパソコン画面によみがえる――。日本写真史の黎明期(れいめいき)に撮影された貴重な古写真の数々が、大学や劇場の公式ホームページ内で公開されている。検索機能や解説も充実しており、利用者は、さながら時間を超えた旅行をするように、100年以上昔の日本の姿を楽しむことができる。(アサヒ・コム編集部)

写真外国人の野外祝賀パーティー(1898年、長崎県で。撮影者未詳)=長崎大提供
写真活気に満ちた東京・浅草の芝居小屋(撮影年代、撮影者未詳)=長崎大提供
写真F・ベアトが撮影した生麦事件の現場(撮影年代未詳、神奈川県で)=長崎大提供
写真「勧進帳」から。九代目市川団十郎(左)の武蔵坊弁慶と五代目尾上菊五郎の富樫左衛門(1899年4月歌舞伎座)=国立劇場提供
写真「伽羅(めいぼく)先代萩」から。五代目中村歌右衛門の乳人政岡(1920年4月歌舞伎座)=国立劇場提供

 屈指の収蔵数と使いやすさで、最も人気が高いのが、長崎大学付属図書館の「幕末・明治期日本古写真メタデータ・データベース」だ。同大が所蔵する約6000点の古写真を収録している。幕末に長崎で「上野撮影局」を開き、坂本竜馬、高杉晋作らの志士たちを撮影した上野彦馬や、横浜で開業した下岡蓮杖、東海道の撮影で知られる英国人のF・ベアトら、著名な撮影者の作品もコレクションに含まれる。これら撮影者別の検索のほか、風景・建築・人物・風俗などジャンルごとに細かく分類された撮影対象や、撮影地域別の検索もできる。

 収められているのは、長崎大が1988年から15年間かけて収集した古写真。幕末の開国以降、外国人が土産として母国に持ち帰ったアルバムを、英国で買い集めた。多くは絵師による手彩色がほどこされている。

 データベース構築の中心となった同大工学部の岡林隆敏教授(前図書館長)は「(旧)文部省から予算、つまり税金を得て実現したコレクション。当時の風俗や風景を知る貴重な資料だけに、広く公開すべきだと考えた」と話す。

 データベースは1998年に公開され、今年1月にトップページへの累積アクセスが100万件を突破した。英語版を備え、国際的な電子図書館システムへも情報発信しているため、海外からの利用も多い。

 「写真の保存状態がよく、とても鮮明なのが最大の魅力。さらに、長崎を撮影した写真は、地元博物館や郷土史家に協力してもらって撮影年代や場所をできる限り特定した。今後の歴史研究にも役立つはず」と岡林教授。もともと都市システム工学が専門だが、いわば「余技」のデータベース構築に熱中したのは、収集した写真そのものに強くひかれたからだという。

 「江戸中期までさかのぼれるような建物や、港にずらりと浮かぶ外国の船団。古写真からは、歴史のひだが見えてくるような気がする。幕末・明治の日本はとても美しかったのでしょう」。その思いを伝えようと、えりすぐりの約500点を収めた「超高精細画像データベース」も公開した。「場所を問わないネットだから、長崎から世界に発信できる。フランスの子ども向け雑誌から利用依頼が届いたときはうれしかったですね」

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 一方、学校法人産業能率大学は創立者の上野陽一氏が上野彦馬のおいにあたることから、ホームページ内に「写真の開祖 上野彦馬」と題したページを設けている。「日本初のプロ写真家」として活躍した彦馬の略歴に加え、ロシア皇帝ニコライ2世や彦馬とその家族の肖像など人物写真を中心に、174点の古写真を収録している。

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 また、国立劇場が運営する「文化デジタルライブラリー」には、江戸時代の役者錦絵とともに、明治期から戦前にかけて活躍した歌舞伎俳優のブロマイドを多数収録。役者名、演目、役名からそれぞれ検索できる。明治期の伝説的な名優、九代目市川団十郎と五代目尾上菊五郎、五代目中村歌右衛門らの舞台姿を彷彿(ほうふつ)とさせる貴重な写真を見ることができる。

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