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世界遺産・石見銀山、「環境配慮」で逆転登録

2007年06月29日11時35分

 いったんは「登録延期」を勧告されながら、28日、国内14件目の世界遺産に決まった、「石見(いわみ)銀山遺跡とその文化的景観」(島根県大田市)。クライストチャーチで開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会までには、「世界遺産の価値がある」と信じ、地球温暖化問題を背景に「自然との共生」にアピールの重点を移した日本政府代表部の根回しがあった。

表  

 21カ国の代表で構成する世界遺産委員会での石見銀山遺跡の審議。冒頭、ユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)の担当者が「登録延期」の勧告内容を報告し、その際、「この案件は複雑だから」と通常の2倍の10分ほどかけて説明した。

 終わると、各国代表が発言を求めるプラカードを次々に上げた。5、6カ国の代表が「自然環境に配慮した素晴らしい遺跡だ」「登録すべきだ」と訴え、「流れ」は一気に登録に傾いた。発言が多く、通常は1件あたり15〜20分の審議時間が約50分に長引いた。

 挙手や投票で登録の可否を決める場合もあるが、今回は壇上のオレ・ブリザイド議長代行(ノルウェー)が「登録に異議はありませんか」と問いかけると、発言はなく淡々と「逆転登録」が決定。国内の産業遺産としては初の登録となった。

各国に接触

 石見銀山遺跡は今年5月、イコモスから「普遍的な価値の証明が不十分」などとして登録延期の勧告を受けていた。これに対する日本政府代表部の作戦は、同遺跡が環境保全に配慮してきた点を強調することだった。

 代表部は、延期勧告の2日後にユネスコ本部のあるパリで「外交活動」を開始。同遺跡では16〜17世紀の採掘期、銀採掘跡地で計画的に植林が進められていた。このことを数カ国の代表に紹介すると、高い評価を受けたという。

 これがきっかけとなり、他国へも同様な働きかけを始めた。日本政府代表の近藤誠一・全権大使は審議終了後、「『環境に優しい』が決め手になった」と振り返った。

 大使は勧告後の1カ月半に、委員会に属するすべての国の代表に会った。ニュージーランド入りした後も、食事会、廊下、ロビーと、各国代表を見つけるたびに駆け寄り、「サポートしてほしい」と訴えた。多い人には7、8回、説得した。

 審査前日の27日夜、数カ国の代表が集まるパーティーの帰路、大使は「登録は大丈夫」と確信したという。審議前半、登録支持を表明したのがこのパーティーに出席した代表たちだった。

 文化庁も、委員国などに勧告に対する100ページを超える文書を作り、青木保長官がイコモス関係者らへ書簡を送るなどの努力を続けた。

「教訓得た」

 いったん登録延期が勧告されたことについて同庁の岩本健吾・記念物課長は東京での会見で「イコモスがどんな点に着目してくるかや、国際的に専門家の理解を得る重要性がわかり、いい教訓になった」と話した。

 今後、世界遺産を目指す国内の候補にも触れ、「経済効果を求めるだけでなく、地域の理解を得ながら保存・整備しなければならない。それが『成功の鍵』だと石見銀山が示した」と語った。

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