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「逆転」石見にあやかれ 世界遺産、登録はゴール?

2007年07月03日12時27分

 予想を覆す「逆転登録」で注目された、石見銀山遺跡(島根県)の世界文化遺産入り。国内各地では、後に続けという動きが相次いでいる。そこには「まちおこし」や「観光」の起爆剤に、という思いも見え隠れする。でも、世界遺産になればどこでも万々歳、というのは早計かもしれない。何より、そう簡単に世界遺産になれるわけでもなさそうなのだ。

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写真世界遺産登録前の5月、観光客でにぎわう石見銀山遺跡。登録でさらなる経済効果が期待されている

 雑誌に「世界遺産」の文字が躍り、旅行会社は世界遺産ツアーを目玉に売り出す――。国内はいま、空前の世界遺産ブームにある。

 世界文化遺産の国内候補地の一つ「富岡製糸場と絹産業遺産群」の地元・群馬県は3日から、現地を写真などで紹介するイベントを県庁で開く。「石見にあやかろうというわけではないのですが」と県世界遺産推進室の松浦利隆室長。「苦戦」が伝えられた石見銀山についても「文化庁は候補を慎重に選んでいるから、今回も大丈夫だろうと思っていた。同じ産業遺産として励みになった」と喜ぶ。

 石見や富岡を追って「わがまちに世界遺産を」と手を挙げる地域も続出。世界遺産が観光の切り札となり、大きな経済効果をもたらすとの期待感がある。

◆経済効果の一方、代償も

 世界遺産総合研究所(広島市)の古田陽久(はるひさ)所長によると、「日本の世界遺産の経済効果は二極化している」。一つは古都奈良の文化財(奈良)など、もとから有名な観光地で登録後も観光客が横ばいの場合。もう一つは、登録を機に知名度が高まり観光客が大きく伸びたケースだ。

 紀伊山地の霊場と参詣(さんけい)道(和歌山、奈良、三重)が04年に登録された和歌山県田辺市は、翌年に観光客が約14%も伸びた。同市熊野ツーリズムビューローの浦野泰之事務局長は「欧米からの参拝者が2、3日かけて古道を歩くなど、ほとんどなかった光景が見られるようになった。田辺のような中山間地域にはありがたい」と手応えを語る。

 石見銀山もこのタイプになる可能性が高そうだ。

 世界遺産への関心の高まりについて、石森秀三・北海道大観光学高等研究センター長は、「戦後の日本が軽んじがちだった伝統や歴史を見直そうとする流れに乗った」と分析する。

 一方で、代償も小さくない。合掌造りで知られる白川郷が95年に世界遺産になった岐阜県白川村では、観光客がほぼ2倍に。一方で車の渋滞や農地の耕作放棄で昔ながらの景観が失われたとの指摘もある。

 「世界級観光地認定」のように受け止められがちな世界遺産だが、世界遺産条約の目的は、かけがえのない遺産の保護。調査や資金援助などの努力を求めてはいるが、観光につながる条文があるわけではない。

 石森さんも、ブランドとして表層的にとらえるのは問題だとしつつ、こう指摘する。「文化遺産を地域の誇りとして守ろうとするともしびは消すべきでない。世界遺産になれなかった場合に代わりとなる制度を、国は早急に考えなくてはならないのではないか」

◆“合格率”62% 世界的に抑制傾向

 石見銀山遺跡は大願を成就させたものの、世界遺産の登録への道は、近年厳しくなる傾向にある。

 今回の世界遺産委員会で世界遺産は851件になった。世界遺産委は00年代に入り、世界遺産条約を締結していても国内に世界遺産を持たない国の登録を優先し、各国の文化遺産の推薦数を年1件に抑えることなどを決めた。しかも、世界遺産委で審査された候補の“合格率”は、04年に82%だったのが年々下がって今年は62%に。11件の文化遺産を抱え、国別件数では上から13番目の日本は厳しい立場に置かれている。

 文化庁は、石見銀山遺跡を推薦する際、世界遺産委が増やすべきだとした「産業遺産」や「文化的景観」の概念を取り入れた。

 だが、ユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)は「東西の文明交流に貢献した証拠がない」などと「延期」を勧告。イコモス前副会長の西村幸夫・東京大教授は「採掘跡が緑に埋もれているなどの特徴が、欧米的には分かりにくかったのかもしれない」と分析する。

 知名度や象徴的な場所の重要性も西村さんは指摘。かつてユネスコの関係者が「富士山や伊勢神宮は推薦しないのか」と尋ねてきたこともあるという。

 文化庁は、昨年初めて国内候補地の公募を実施したばかり。24件の応募があり、今年1月に富士山など4件を選定。国内の候補は一気に倍増した。世界的な登録抑制の流れと、国内での関心の高まりのはざまで、同庁は難しい対応を迫られることになりそうだ。

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