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長いタイトルの本 増えてます

2007年07月05日11時41分

 『食い逃げされてもバイトは雇うな』『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する』――長いタイトルの本が、このところ、書店の店頭をにぎわしている。話し言葉そのままで、おしゃべりだ。

写真さまざまな「長い」タイトルの本。「ロビンソン・クルーソー」も、実は原題は、英語68語、邦訳で約125文字と超ロング。

 『食い逃げ――』は、大ベストセラーとなった『さおだけ屋はなぜ潰(つぶ)れないのか?』の第2弾。公認会計士の山田真哉さんが光文社から出した新書だ。

 会計学の本と思えないこの書名は「新書」の制約から生まれた。光文社の古谷俊勝出版局長は「新書はカバーが同じで、タイトルで差をつけることを宿命づけられている。内容をアピールしなければならないが、著者名や短いタイトルからは、中身が伝わらないことがある。この本は『超分かりやすい会計学』でも敷居が高いと考えた」と話す。

 「『さおだけ屋――』が一つのビジネスモデルをつくったのではないか」。こう指摘するのは、島田紳助さんの新書『ご飯を大盛り――』をヒットさせた幻冬舎編集本部第三編集局編集第三部の茅原秀行編集長だ。「ゲームの世界では、『あなたの脳年齢はいくつですか?』『体脂肪は?』など、問いを突きつけて関心を引く手法を『突きつけ』というそうです。その手法が広がったともいえるのではないか」

 集英社新書編集部の椛島良介編集長は「新書の長いタイトルは、雑誌の見出しみたいな感じがある」という。「表現の幅が広がった。昨夏の太田光さんと中沢新一さんの『憲法九条を世界遺産に』は、世界遺産をつけることで、読者に考えてもらう効果が出た」

 新書のタイトルがこぞって長いわけではない。『バカの壁』『国家の品格』(新潮社)と二大ベストセラーは短い。新潮新書編集部の三重博一編集長は「大事なのは内容が読者にどう届くか。長短は結果です」。

 岩波書店新書編集部の坂巻克巳編集委員は「タイトルであまり角度を明確にしてしまうと読者を限定してしまう。間口を広く着実に読み継がれるものという基本姿勢」と話す。短く、長くと決めるのではなく、自由に個性を発揮するのが最近の新書事情のようだ。

 単行本はどうか。三省堂書店神田本店次長の関根昭二さんは、「情報量が多く気が利いたタイトルだと棚作りをしやすいのは確か」という。「前からビジネス本やハウツー本にはあったが、文芸書にも広がっているようだ。片山恭一さんの『世界の中心で、愛をさけぶ』がはしりではないか」

 長いタイトルに郷愁をかき立てられるのは海外文学、特にSFの読者だろう。フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が68年、ハーラン・エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』が69年。「60年代後半から70年代の英語圏のSFの第2期黄金時代に、これまでと何か違う、格好いい!と思わせるタイトルの本が続出した」と早川書房編集部第二課の込山博実課長。

◆想像力弱まる?

 図書館のための書誌データベースを作成しているTRC図書館流通センター。5月、6月、そのスタッフが目をむく本が相次いだ。

 まず『雨の夜にカサもささずにトレンチコートのえりを立てて(以下略)』は72文字。言葉のアーティスト、イチハラヒロコさんの作品集だ。三修社編集部の北村英治編集長は「最初は困ったな、注文を受けるにも、落語の寿限無(じゅげむ)みたいだし」と思ったという。「でも書店に並んでみると、タイトルがいろんなことを語っていて目立つし、奇をてらった感じもなかった」

 6月末に出た美術家横尾忠則さんの『悩みも迷いも若者の特技だと思えば気にすることないですよ。皆そうして(以下略)』は114文字。勉誠出版編集部の岡田林太郎さんは「横尾さんにとっても型破りな本なので、いっそものすごく長くしてしまおうと、これまで一番長かったものを調べ、それを超えるものにしました」。

 『言語学者が政治家を丸裸にする』(文芸春秋)の著者で米・ユタ大学の東照二教授(社会言語学)によると、長くなることで目を引き新鮮さを生むのに加え、話し言葉に近く会話が成り立っているように感じさせ、心理的な距離を縮める効果がある。「読者側の活字に対する想像力が弱くなり、たくさん説明が必要になっているのではないか。互いの間で共有する情報の多いハイコンテキスト社会から、たくさんの言葉で表現する必要のあるローコンテキスト社会に変わってきていることも背景にあるかもしれない」

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