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火薬で描く日本体験 中国の蔡國強さんが「時光」展

2007年07月11日15時33分

 中国出身でニューヨークを拠点に活動している蔡國強(ツァイ・グォチャン)(57年生まれ)の「時光――蔡國強と資生堂」展は、「里帰り展」ともいえる。蔡は86年に来日。日本での約9年間の活動をステップに、世界へジャンプしたからだ。来年の北京五輪では開幕式で視覚部門の演出を担当する。

写真蔡國強「時光(冬)」
写真蔡國強「時光」の制作風景

 展示の中心は、4点の新作だ。中国4大発明の一つとされる火薬を爆発させて絵を描く「火薬ドローイング」である。蔡のトレードマークともいえる火薬を使って、縦約2〜4メートルの巨大なパネルの上に、春夏秋冬を描いた。日本での滞在を四季になぞらえ、自身の日本体験の心境を重ねたという。

 不安な気持ちで来日したのは冬。松の木にカラスが群れる。環境に慣れはじめた春は、魚の群れも楽しげだ。夏は赤トンボや亀。希望を胸に渡米した秋は、ひときわ大きな画面に、オレンジがかった菊や破裂するような夕日が印象的だ=写真上。

 個展直前に行われた公開制作=同下=を見た。着色用の顔料や、爆発の飛散を調整するもみ殻などを混ぜた数種類の火薬を、鳥や樹木の形に切り抜いた型紙の下や周囲にまき、点火する。爆音と炎に包まれて、一瞬にしてモノトーンを基調とした水墨画のような幽遠な世界が現れる。墨と自由に戯れた中国の文人画や、即興的に描かれた席画を思わせた。

 蔡が日本滞在時に得たものは、かつて中国にあり、今では失われていた文化や精神だったという。ものごとを包み込む包容性と、少し離れて見る距離感などだ。

 それともう一つ、日本企業の文化支援も得た。資生堂は94年、同社のギャラリーでのグループ展に蔡を招いて以来、26もの企画を支援してきた。今展は、「会社の名前が出なくても、担当者が代わってもサポートし続けてくれた」日本企業と、中国人美術家との物語を伝えたい、という蔡の思いが込められている。

 企業の文化支援は、費用対効果を重視する投資とは違うけれど、これほどの成果があがれば、やりがいもあるだろう。「時光」とは、そんな友情の歳月のことか。

 ◆「時光――蔡國強と資生堂」展は8月12日まで、東京・銀座8の8の3の資生堂ギャラリー。月曜休み。

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