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美の惑星直列 欧州3大美術展から 中

2007年07月21日12時48分

 「Are You Chinese?」

写真嵐で倒壊したアイ・ウェイウェイの作品=ドイツ・カッセル市で
写真広島から持ち込まれた石の周囲を、岡部昌生のフロッタージュ作品が囲む=ベネチア・ビエンナーレの日本館で

 ドクメンタが開かれているドイツ・カッセル市で、3度も聞かれた。外国に行ったことのない中国人1001人を数回に分けて入国させ、現地で交流させるという艾未未(アイ・ウェイウェイ)の「作品」の1人かと、尋ねられたのだ。

 艾は屋外にも、中国の古い扉を使った木造作品を展示。嵐で倒壊したが、「直さないでくれ。この方が美しい」と主張し、存在感は頭ひとつ抜け出ている。

 ベネチア・ビエンナーレも、非西洋勢の作品なくしては成り立たなくなって久しい。来年の北京五輪で芸術監督をつとめる蔡國強(ツァイ・グォチャン)が率いて2年前にデビューした中国館は、前回と同じオイルタンクの並ぶ展示室を使い存続を強くアピール。アフリカの作家を集めた企画展も開かれ、近くではガーナ出身でナイジェリアで活動するエル・アナツィが様々な色や素材によるクリムトの絵の背景のような巨大な織物作品を発表した。

 中世の海上都市を今に伝える迷宮のような街中では、チェ・ゲバラに扮した森村泰昌のポスターがあちこちに張られた。ある邸宅内に石や絵画による寡黙な結界を築いた、韓国出身で日本を拠点とする李禹煥(リ・ウファン)の企画展と共に話題を集めた。

■新マーケット

 両展に見える非西洋への傾斜。ドクメンタのキュレーターであるノアック氏は「近い将来、西洋美術は優勢でなくなる。それは美術というより経済の問題。中国やインドが典型例で、新しいマーケットが現れている。だから、非西洋の芸術家と積極的に交流しなければならない」と話す。

 ベネチア開幕の3日後から、スイスで5日間開かれた世界最大規模のアートフェア「アートバーゼル」は売り上げの新記録を樹立。「アートフェア東京」の辛美沙エグゼクティブ・ディレクターは、「ベネチアに集まった世界の美術関係者がそのままバーゼルに移動していた。そしてドクメンタへと向かう。ベネチアの出品作家の作品は、ほとんどバーゼルで売られている」と指摘する。

 現代アート市場は、特に欧米で「バブル」を思わせる活況にあるのだ。例えば、ジャクソン・ポロック(米)の1948年の作品が昨年、絵画で過去最高と言われる1億4000万ドル(約170億円)で売られ、先月は18世紀の人間の頭蓋(ずがい)骨をダイヤで覆ったダミアン・ハースト(英)の作品に5000万ポンド(約125億円)の売値が付いた。

 「市場の関心は、ゴッホやピカソ、クリムトら歴史的位置づけがはっきりしている作家から、現代作家へ移ってきている。その重要な一角を中国やインドが占めているのです」と辛さん。

■日本人も続く

 「非西洋」の一員である日本人作家も、両展で存在感を示していた。

 港千尋氏が企画したベネチアの日本館では、岡部昌生が1000点以上のフロッタージュ(こすりだし)作品を壁一面に展示した。

 被爆地・広島の軍港につながる駅の跡地に紙をのせ、2Bの鉛筆でこすって写し取ったものだ。地表の凹凸やざらつきを身体に伝えながらの9年間にわたる力作は、日本から持ち込んだ石の表面を観客にも写し取らせるという参加型の展示とも共鳴し、都市の記憶や歴史がわき出していた。

 束芋の映像作品や加藤泉の絵画もイタリアやドイツのベテランに劣らぬ扱いを受けており、企画展示場では、藤本由紀夫の「音」をテーマにした作品が詩的な雰囲気を醸し出す。

 ドクメンタでは、マンガとのつながりを感じさせる青木陵子の絵が好意的に受け取られていた。

 世界最大規模の両展で増す非西洋の存在感。非西洋が脅かしつつも、西洋がしたたかに引き込む、そんな綱引きにも見える。

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