現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 政治学に実証的視点 「レヴァイアサン」創刊20年2007年08月23日11時48分 現代政治研究の専門誌「レヴァイアサン」(木鐸社)が、創刊20年を迎えた。「実証的な政治学」を掲げた編集方針は、現代日本の政治ジャーナリズムに影響を与えた一方で、政治学のありようをめぐる議論も巻き起こしてきた。 春と秋、年2回発行で、今春で40号を数え、臨時増刊も6冊出た。創刊時の編集同人は猪口孝、大嶽秀夫、村松岐夫の政治学者3氏。当時40代で、米国の大学で実証的な分析手法を学んだ世代だ。 87年秋に出た創刊号巻頭の発刊趣意では、従来の日本政治研究を「歴史や思想史あるいは外国研究の片手間に、評論的、印象主義的に日本政治を扱う」と批判、この流れが変わりつつあるとして、政治学の活性化や政治ジャーナリズムへの貢献を目指す、とうたった。 創刊号巻末の鼎談(ていだん)で、大嶽氏は、丸山真男氏ら上の世代の政治学者の名を挙げ、彼らは「本格的に自分の仕事として政治学、日本現代政治の分析をやる、という風にはならなかった」と指摘した。 創刊号には、三宅一郎氏の「地元利益志向と保守化」や、猪口氏の「選挙と公共政策」といった実証的な論文が載った。政治意識調査結果などの数量的な分析に基づいた論文だ。 村松氏は、創刊の目的は「日本をよくするのではなく、日本の政治学に新しい視点を導入することにあった」と振り返る。 一方、3人の姿勢は、「よりよい政治」を目指す政治ジャーナリズムや、他の政治学者から批判も受けた。 中央公論元編集長の粕谷一希氏は、雑誌「選択」88年1月号で、すぐれた批判は洞察力に基づくと言い、「歴史や思想史や外国研究は、そうした洞察力の養成に意味があるので、片手間に印象批評をやってきたわけではあるまい」と批判した。 阿部齊(ひとし)氏は『現代政治と政治学』(89年)で、政治学も他の現実科学同様、実証的でなければならないものの、「実証的である前に、何を実証するかについての選択があるはずであり、その選択自体は実証的ではありえない」と指摘した。 田口富久治・名古屋大名誉教授も『戦後日本政治学史』(01年)で「政治思想史家、政治史家、外国研究者が、日本政治(略)を本格的に、十分な資料的裏づけと理論的枠組みをもちつつ論ずるということはなかったというのであろうか?」と疑問を呈した。 創刊当時の編集同人はすでに退き、現在は加藤淳子・東京大教授、川人貞史・東北大教授、辻中豊・筑波大教授、真渕勝・京都大教授が編集委員だ。 加藤氏ら現編集委員は、この20年、レヴァイアサンは、政治ジャーナリズムに一定の影響を与えたと見る。メディアが従来の政局報道だけでなく、世論調査や投票行動分析などのデータに基づく政治報道を展開し、大学との共同調査に基づく新聞記事も見られるようになったからだ。 辻中氏は、総合雑誌との間で役割分担ができ、政治学者の意識も変化した、と指摘する。総合雑誌には「規範的(べき論)」な論文、レヴァイアサンには「分析的」な論文と分かれ、「昔は学者のコメントにも『規範』と『分析』の区別がなかった。今は、きっちり分けてコメントしている」。
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