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心をとらえる調べ 「山中智恵子全歌集」が完結

2007年08月28日10時35分

 『山中智恵子全歌集』(砂子屋書房、上下)が完結した。あやしいまでに心をとらえる調べを言葉で奏で、居住地の名にちなみ鈴鹿の巫女(みこ)と愛称された山中さん=06年死去=の歌業の総体がわかる。

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山中智恵子

 第1歌集『空間格子』から同17『玲瓏(れいろう)之記』ほか、まとめつつあった未完の「青扇」に至る約9000首を収録。各巻に解説、下巻巻末には年譜と初句索引。各1万2000円(税別)。

 25年、名古屋市生まれ。21歳で「日本歌人」に入会、前川佐美雄に師事した山中さんの独特の詩的感性は、『空間格子』『紡錘』『みずかありなむ』などに結晶。やがて歌壇に位置を占め、85年、『星肆(ほしくら)』で迢空賞を受賞した。

 古典の教養に裏打ちされた作品には、難解との批評も。だが「私の歌のほとんどが、一九四五年八月十五日を、無意識に蔵している」と書き「天皇制を無化したい」と語り、戦中派の思いを託して時代を詠む姿勢はむしろ明快だった。

 60年安保闘争の敗北を見つめた一首、

 その問ひを負へよ夕日は降(くだ)ちゆき幻日のごと青旗なびく(『みずかありなむ』)

 を、60年代後半の全共闘運動さ中の若者が暗唱した。

 また昭和天皇への挽歌(ばんか)、

 青人草(あおひとぐさ)あまた殺してしづまりし天皇制の終を視なむ(『夢之記』)

 には歌壇内外が注目した。

 新歌集の表題も決め準備中の06年3月9日、急性呼吸不全で死去。享年80。

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