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「朱子語類」現代語訳に着手 全140巻を20年かけ

2007年09月11日11時30分

 中国南宋の思想家・朱熹(しゅき)(1130〜1200年)と弟子たちの問答を記録した『朱子語類』全巻の現代語訳を目指す、訳注刊行会が発足した。東アジアの近世に大きな影響を及ぼした朱子学の総体を伝える書物で、翻訳の試みは何度かあったが、全140巻と膨大で、中国南部の口語体で書いた難解さもあり、実現しなかった。溝口雄三・東京大名誉教授(中国思想史)が呼びかけ、21人の研究者が参加する。完成のめどが立つのは20年後だという。現代の儒学者たちの壮大なプロジェクトだ。

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20年の成果がまとまった第1回配本、「太極とは何か」といった問答が収められている

 「朱熹が始めた朱子学は、近世の東アジアの知識人に不可欠な知識であり、道徳であり科学でもあった。中国から朝鮮へ広がり、徳川幕府が取り入れ、思想や文化に広範な影響を及ぼした。東アジア共通の思想遺産です」と溝口さんは言う。『朱子語類』は朱熹の講義録というべき存在で、政治や歴史から社会、経済、法制、さらに科学や天文学にまで言及する。江戸時代の儒学塾や藩校で必読書だったという。

 これまでは江戸時代の本を漢文読みしてきたが、興膳宏・京都大名誉教授(中国文学)は「漢文を読む力が日本の社会で急速に失われている。少し前の時代の人たちが何を考えたのか分からなくなってしまう」と現代語訳の必要性を話す。

 刊行会の基礎は溝口さんが20年前に始めた研究会で、そこで育った研究者の中から、ともに40歳代前半の垣内景子・明治大教授、恩田裕正・東海大准教授が今後の活動の中心となることを承諾した。

 東京で8月にあった初会合で、溝口さんは「私は75歳。次世代に引き継ぐことで、初めて全巻の翻訳を目指すことが可能になりました。将来、意志を継ぐ人が現れると信じています」と、うれしそうだった。

 過去20年の成果が第1回配本として、7月末に汲古書院から刊行されたが、内容は140巻のうちの3巻分にすぎない。難解な言葉の研究も相当に進み、今後の作業はいくらか加速しそうだが、それでも20年間で70〜100巻程度の見通しだという。

 垣内さんは「特殊な文献ですから訓練がないと読めません。人を育てながら作業を進めなくては」。恩田さんは「生きている限りやりたい。100巻ぐらいまで進めば、さらに次の世代にバトンタッチを考えることになるのでしょう」と緊張ぎみ。

 印刷は数百部程度で、収益はまったく見込めない。支援しようと、大阪を中心に企業経営者らが募金を始めている。

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