現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 世界遺産候補地連携を ユネスコ・松浦事務局長2007年09月13日11時20分 石見銀山遺跡(島根県)の登録で、世界遺産に対する関心が高まっている。その現状と行方は。平泉(岩手県)など国内の候補地にはどんな課題があるのか。登録を決める国連教育科学文化機関(ユネスコ)のトップ、松浦晃一郎事務局長(69)に聞いた。
◇ 現在、851件に達した世界遺産。その約8割が文化遺産で、日本では姫路城(兵庫県)など11件が登録されている。 世界遺産条約が72年に採択されてからの35年間を、松浦氏は三つの時期に分けて説明する。第1期(〜91年)に記念物、建造物群、遺跡を登録。「西欧中心でキリスト教関係の建物群が多かった」ため、続く第2期(92〜06年)には産業遺産や20世紀の建築、人類と自然との共生を示す文化的景観を積極的に登録し、遺産の多様化が進んだ。 「今年から第3期に入ったと思っている」と松浦氏。モニタリング(継続的な監視)と、文化遺産の総合的な保護を重視し、バーミヤン(アフガニスタン)のように危機にある遺産については国際的な保護を特に手厚くするという。合掌造り集落の白川郷(岐阜県)での交通渋滞など、各地で問題が起きていることを踏まえ、「観光と遺産の普遍的な価値をどう両立させるかも課題」とした。 日本では、04年に紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)(和歌山、奈良、三重県)、今年の石見銀山遺跡と、ようやく文化的景観の登録が続いた。来年には平泉の登録がユネスコ世界遺産委員会で話し合われる。 「平泉は、建物だけで顕著な普遍的価値があるとは言えないから、『浄土思想を基調とする文化的景観』という概念でお寺などをとらえている。専門家にどう評価されるか興味深いが、浄土思想がわかりにくいと判断されるかもしれない」 文化的景観は、背後にある無形の価値の評価が非常に難しい。建物そのものに顕著な普遍的価値が必要と考える専門家はまだ少なくない。世界遺産委の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)は「顕著な普遍的価値を持つ出来事、現存の伝統・思想・信仰や芸術的・文学的作品と明白な関連がある」という登録基準の適用に厳しく「常にもめるのが実情」という。石見銀山遺跡も当初「価値がわかりにくい」とされた。南アフリカでネルソン・マンデラ前大統領が収監されたアパルトヘイトの象徴、ロベン島も、すんなりとは登録されなかった。 国内ではさらに、富士山など暫定リストに載った文化遺産候補が6件控える。ほかにも登録を目指す動きが各地で広がる。 松浦氏は「富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県)、飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群(奈良県)など、バラエティーを持たせる努力はいい」と日本の戦略を評価しつつ、「県単位では限界がある」と指摘。たとえば三内丸山遺跡(青森県)など国内の代表的な縄文遺跡を集めて登録するなど、地域間での連携が欠かせないとの見解を示した。 PR情報 |