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文庫本「ジャケ買い」 『人間失格』は『デスノート』風

2007年09月18日11時21分

 CDのように表紙のデザインで選ぶ「ジャケ買い」でヒットする文庫本が登場した。本も中身だけでは売れない。若い世代の心をつかむために、出版社はあの手この手の戦略を打ち出す。

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同じ作品でも帯とカバーで違った装いに

■若者と古典を橋渡し

 集英社文庫は太宰治『人間失格』のカバーを自社の人気コミック『DEATH NOTE(デスノート)』の小畑健さんのイラストに変えたところ、この夏の3カ月で10万部を突破するヒットになった。

 これまでは増刷しても年に数千部だった。文庫編集部の伊藤亮さんが「破滅的で美しい『デスノート』と太宰の世界観は通じるのでは」と企画。解説などを含め、中身は変えていない。「デスノート」の主人公を思わせる少年のイラストで、コミック売り場に置かれることもあり、近代文学になじみの薄い人たちも巻き込むブームになった。

 そのほか夏目漱石『こころ』、武者小路実篤『友情・初恋』、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の3冊を、俳優、蒼井優をモデルにそれぞれの物語の世界をイメージした写真のカバーに新装した。各5万部の期間限定で、まとめて購入する人も多く、表情がアップの『銀河鉄道〜』の人気が高いとか。小山田恭子編集長は「若い人に読んでほしいと願って、新装版にしました。古典にも工夫しどころがあり、魅力的なカバーで時代にあった装いに着替えていく。文庫だからできる醍醐味(だいごみ)でしょう」と話す。

 文芸のしにせ、新潮文庫も「さすがに漫画までは使えませんが」と前置きしながら、「カバーを変えると売れるのは事実。星新一さんのカバーを変えたら、かわいいからとコーナーを作ってくれた書店もありました」と文庫編集部の佐々木勉さん。夏フェアの文庫すべて、帯からコピーを抜いて、パンダのキャラクターYonda?くんが様々なポーズで本を読むイラストを20種類用意した。

 「文庫王」の異名を持つフリーライターの岡崎武志さんも集英社の蒼井優版『友情・初恋』を「ジャケ買い」したひとり。「全部を蒼井優にしてほしいくらい大賛成。これをきっかけに、ほかの作品を読んでみようと思う人がいるかもしれない。教科書からも近代の名作が消えていく中、文庫は若い世代への啓蒙(けいもう)という役割を担っている」

 「文庫は古くて堅い武士のような存在だった」と岡崎さんはみる。たとえば古典なら、淡い模様のような抽象画で文学世界を表現するカバーが定番だった。「今は、若い人たちの本に手を伸ばす力が弱くなっている。だから、本の方から手を伸ばしていかなくてはいけないのでしょう」

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