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SFのいま語る 世界大会で来日2作家

2007年09月25日11時17分

 第65回世界SF大会が今月初めまで、横浜で開かれた。国内外のファンによる祭典で、アジア開催は初めて。大会に参加した米国の作家デイビッド・ブリンさんとケリー・リンクさんに、SFやファンタジーの今日について聞いた。

■「過去の理解が必要」デイビッド・ブリンさん

 大会名誉ゲストのブリンさんは50年、カリフォルニア生まれ。イルカやチンパンジーが人類の補助で知性を得て、人間と共に宇宙で活躍する一連の「知性化」シリーズで人気を確立した。

 最新翻訳の『キルン・ピープル』(酒井昭伸訳、ハヤカワ文庫)は、がらりと趣が変わり、個々人の意識を「転写」した特殊陶土人形を人々が常用している未来社会。そこでの人間を重層的に描く。

 陶土人形といえば中国の兵馬俑(へいばよう)。ブリンさんは来日前に中国で見てきたという。成都と北京ではSF作家やファンと交流もした。

 「中国ではSFはまだ新しいジャンル。政府の風向きによって奨励されたり、書きにくくなったりするという。中国の作家たちは『古典にも通じる文学をSFで実現せねばならない』と言っていたが、私は『ちょっと違う』と答えた。良い親は、我が子が自分を超えることを望む。先人の肩に乗って自分の作品を作ればいい。その肩とは、自分たち以外の文化でもありうる。それを理解し、その過ちを乗り越えることが先人への恩返しだ」

 そのために「すべての民族の歴史をひもとき、アイデアを得ている」という。会見でも「前頭葉の可能性を開拓していくもの。過去・現在・未来の地平でリアリティーを変革するもの。それがSFだ」と語った。

 彼の作品は、膨大な取材を踏まえ、社会のここがこう変わったらどうなるか、という思考実験の結果が随所に盛ってある。単なる発明譚や、時代を未来に投影しただけの冒険物語と違い、社会全体の変化を描いて想像力を刺激する。

 「多くの平均的な米国人が、未来について考えるのを嫌がり、昔を懐かしんでいる。いい状態ではない。SFが米国だけでなく他の国でも勢いを持ち、米国を力づけてくれたらと思う」

 大会は日本やアジアのSFへの期待を反映して盛会だった。

 100人以上の作家・編集者・研究者を交え、400を超す企画が開かれた。中国の「科幻小説」の現状、仮想空間を活用した新しい表現など、多彩な討論も繰り広げられた。

 アニメと特撮の国・日本での開催という特徴も生かされ、大会参加者の投票で優秀作に贈るヒューゴー賞の授賞式には、ウルトラマンも参加して盛り上げた。

■「喪失をテーマに」 ケリー・リンクさん

 日常の生活の場にゾンビや霊が当たり前のようにいるメタフィクションで注目される米国の作家ケリー・リンクさん。短編集『マジック・フォー・ビギナーズ』(柴田元幸訳、早川書房)を先ごろ刊行した。

 表題作は、ドラマの登場人物と交信できる電話ボックスを相続した少年が主人公の青春小説(英国SF協会賞など)。ほかにかばんの中に国があるという「妖精のハンドバッグ」(ヒューゴー賞など)など全9編を収録。

 現実と非現実の境が不明で、つじつまが合わないまま進む夢のような作品群だ。訳者あとがきで〈日常や定型などの「ふつう」からずれることで、時には笑いが生じ、時には恐怖が生じる。(中略)笑っていいのか怖がるべきなのかよくわからないこともある〉と指摘された。

 「良いことがあっても悲しかったり、ひどいことがあっても安心したりうれしいという感情が出てきたりするという人間の複雑な心理を描きたい。読者には、夢を見ているような気持ちになってほしい」

 執筆テーマの一つは「喪失」という。「愛する人や進むべき道を失った後、何が起こるのかを書きたい。だからこそ、死者と話す人を描くようにしている」

 『指輪物語』やスターウォーズ、宮崎駿アニメにふれて育った。SFファンタジー作家と呼ばれるのはうれしいというが、ジャンルを超えて支持される作家の一人だ。「村上春樹は米国でも影響力があるが、作品によって主流文学にもSFにも分類される。ジャンルは読者が決めることでは」

 マサチューセッツ州ノーサンプトンで夫と小出版社を経営。大出版社に頼らず丁寧な執筆を続ける作家たちを応援している。「本が大好き。作家より読者の部分の方が大きい。多和田葉子や小川洋子ら日本の小説も、もっと読みたい」

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