現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 ハワイに描く「家族」「死」「愛」 よしもとばなな最新作2007年09月26日15時28分 作家のよしもとばななさんの最新作『まぼろしハワイ』(幻冬舎)は取材、執筆に5年をかけた書き下ろしの小説集だ。デビュー作「キッチン」からちょうど20年、小説への変わらぬ思いを聞いた。 収められた3編はすべてハワイが舞台。表題作は幼いころに母を亡くし、突然父までも失った「私」が、年の近い義理の母「あざみさん」とハワイへゆく物語だ。家族の思い出の場所、オアフ島で「私」は母の愛を思い出し、悲しいけれど幸せだった父の人生に思いをはせる。緩くて温かいハワイの空気が物語に広がる。 「誰がどんなふうに行っても素晴らしい場所」とハワイを愛す。初めて訪れたのは5年ほど前。ハワイ島の自然の豊かさが強く印象に残っている。「自分の人生の歴史の中に、ハワイという場所が自然に入っている主人公たちを書きたかった」という今回の作品で、心がけていたのは「内側に入りこむこと」。観光地はどこも観光客に見せるのとは違う顔を持っている、と思う。歴史を学び、取材のために何度もハワイを訪れた。フラダンスも習った。 旅先では海に行ったり、車に乗ったり、ごく普通に過ごす。「車からの風景がすごく心に残っていて、なんてことないことの方がすごく覚えている」 「まぼろしハワイ」の「私」は〈なんで時間は過ぎてしまうんだろう、どうして愛する人はみな逝ってしまうんだろう。私はどうしてそれに対してなにもできないんだろう〉と思う。作品を通してずっと「家族」や「死」を描いてきた。「時間は流れるもの」ということを強く意識し、考え、小説のテーマにする。 87年に「キッチン」で海燕新人文学賞を受賞、いくつもの作品が世界三十数カ国で翻訳され、読み継がれてきた。 作家になった20代は「人生がつらかったから、自分を癒やすために書いていた部分が大きい」と振り返るが、今は、読者のために小説を書く。「これまでの20年はだいたい思った通りに、その年でしかできない作品を出してきた気がする」。予想外だったのは「子供を産んだことだけ」。「身の回りの状況は変わったけれど、変わるかなとすごく期待していた作品の方は変わらなかった」とちょっと残念そう。 ハワイの物語をもう1冊書き上げて、次の目標は「大得意の短編をもっと極めたい」。書きたいことは尽きない。「普通に生活していると、次はこんなことを、とテーマが決まってくる。書いてくれ、と向こうからやってくるのです」 PR情報 |