現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 「日本への愛伝えたい」 野間文芸翻訳賞のアクーニン氏2007年10月24日11時10分 ロシアで空前の推理小説ブームをつくったベストセラー作家ボリス・アクーニン氏(51)が、日本文学の優れた翻訳に贈る野間文芸翻訳賞(講談社主催)を先ごろ受けた。ソ連時代に「ファシストとみなされて出版を禁じられた三島由紀夫の作品を、発表のあてもなく翻訳した」仕事が対象だ。モスクワであった授賞式では「小説の助けを借りて、日本への愛を伝えたい」と意欲を語った。 受賞を機にモスクワ郊外の自宅で話を聞いた。アクーニンは筆名で、日本語の「悪人」や無政府主義者バクーニンなどにちなむ。本名はグリゴリー・チハルチシビリで、父がグルジア系だが、モスクワで育った。 14歳の時、三島の割腹自殺に衝撃を受けた。しかし、モスクワ大で日本語を学び、日本文学の専門家になってその作品に接すると、「彼のイデオロギーや人生に関心を失い、形象や心理的性格の正確な描写、ニュアンスの巨匠としての三島に魅了された」。 発表の目がなかった翻訳だが、「逆に自分のためだけに訳せた。一つの文章を100回練り直すこともあった」という。ペレストロイカの到来したソ連末期にやっと発表された「金閣寺」や「憂国」などの訳業が今回、「三島の芸術的な文体に匹敵するものをロシア語で再現した」(選考委員の沼野充義・東京大教授)と高く評価された。 日本の作家では、「詩的で寡黙な散文を書く丸山健二にもひかれる」。「素朴や単純の美、結果より過程を大事にすることなど、人間形成期に日本から学んだことは大きい」とも言う。 「できることはやった」と感じ、翻訳はやめた。代わりに98年から始めた人気の連作推理小説「ファンドーリンの冒険」などで日本に触れたり、舞台にしたりすることが増えている。「日本との縁は切り離せない。そうやって日本への愛を、できるだけ多くの読者に感染させたい」 新分野の開拓にも最近は意欲的だ。12月には、登場人物に自分の好きな俳優をあてはめ、筋の進行に、そうした俳優の出た映画の場面の絵を多数組み合わせ、小説と映画の融合を図る「ロマン・キノー」の第1作が出る。 PR情報 |