現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事

「源氏物語は世界文学」 英訳の研究者・タイラー氏来日

2007年10月30日12時48分

 オーストラリアの日本文学研究者で、源氏物語の英訳で知られるロイヤル・タイラー氏(70)が国際交流基金賞を受賞したのを機に、翻訳のエピソードや古典研究の魅力を聞いた。「源氏物語は日本文化の基礎を築いた」とする一方で、「日本らしさやエキゾチシズム(異国情緒)を超越し、普遍性がある世界文学」と語った。

写真

ロイヤル・タイラーさん=東京都港区で

 01年に米国で出版した「The Tale of Genji」は、「タイラー版」の英訳として評価されている。54帖(じょう)の長編を原典で根気強く読み解き、8年かけて翻訳した。

 「日本の古典研究者である以上、源氏物語に取り組まなければならなかった。しかも自ら翻訳しないと、理解できなかったのです」。外国文学の研究に地道な翻訳の営みがいかに大切かを示唆した。

 原典の中に深くひかれる部分に何度も行き当たった。「そこに生き生きした印象を受け、自分なりの考えが自然と形作られていった」という。

 徹底して細部にこだわった。例えば、「『我はわれ』と、うちそむきながめて、『あはれなりし、世の有様(ありさま)かな』と……」(澪標(みおつくし))のくだり。「我はわれ」という言葉に作者の強い表現を感じたが、以前の訳では軽んじられていた。現代英語ではあまり使われない表現だが、あえて「I am I」と訳す工夫をした。

 読み解くうち、不思議なことにも気づいた。「異なる部分から別の声が聞き取れた。源氏物語には少なくとも4人の作者がいたと推測できる」。「かつて和辻哲郎も指摘したことだが、紫式部は著者であると同時に編集者であったのではないでしょうか」と語る。

 こんな読み方が出来るのも、「深くて広い空間がある古典文学ならではの楽しみ」という。

 父が米国の外交官で、欧州で生まれ育ち、米コロンビア大でドナルド・キーン氏に師事。日本文学の博士号を取得し、米国で教えた後、90年にオーストラリアに移り、大学教授を務めた。

PR情報

このページのトップに戻る