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マンガの力(5) キャプテン翼の「洗脳」(下)

2007年11月12日11時35分

 日本で優秀な人材がMFに偏るのは、翼の影響ではないか。日本サッカー界の慢性的な決定力不足を「キャプテン翼」の主人公、大空翼に押しつける声が、作者・高橋陽一の耳にも時折入る。

 小学生時代はFWだった翼は恩師・ロベルト本郷の教えで中学からMFに転向した。「中盤にしたのは、ボールに触れる場面を増やせるから。当時はマラドーナやジーコとかMFが目立っていたし」と説明する高橋も、日本のFWの人材不足を気にかけてはいる。

 02年に「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載を始めた「ハングリーハート」の主人公、叶恭介はFWという設定にした。連載中の「GOLDEN―23」では、GK若島津健をFWに挑戦させている。スポーツライターの乙武洋匡との対談で「20年後に日本の得点力不足が解消されるようにFWをもっと描いて」とリクエストされたのがきっかけだ。

 「現実の流れは、やはり気になる。読者の目も肥えてきたし、非現実的なストーリーは書きにくい」。高橋は日本サッカーの足取りを意識する自分を感じる。

 98年、日本はW杯に初出場し、その夏、中田英寿はイタリア・セリエAにデビューした。99年は世界ユース選手権で準優勝。日本サッカー界は猛スピードで発展した。「当時は現実がマンガを超えていく感覚だった」と振り返る高橋が言葉をつなぐ。「その流れがドイツW杯の1次リーグ敗退で止まったかな。安易に日本のW杯優勝を描くのは、無理がある気がするんです」

 日本サッカー協会は05年元日に「2050年までに日本はW杯で優勝する」という宣言を発表した。「頂点に近づくほど、その道は険しいが、大きな夢を描くのは大事なこと」。そう語る日本協会会長・川淵三郎は高橋にエールを送る。

 「大人になると現実を直視して、夢をあきらめがちになる。マンガも登場人物が大人になり、現実を意識しすぎると、理想のシナリオとのギャップに悩むのかも。もう一度、子供を主人公に、サッカー少年に夢を与える作品を描いてほしい」

 「GOLDEN―23」で、翼の妻・早苗は妊娠中で、来年には第1子が生まれる。日本のW杯優勝は翼の息子世代に託す可能性もあるのか? 「ありえなくは、ないです」。高橋は笑って、そうこたえた。〈敬称略〉

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