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マンガの力(6) 「ボクサーのバイブル」 はじめの一歩

2007年11月14日11時22分

 かつて、ボクサーのあこがれは「あしたのジョー」の矢吹丈だった。今は「はじめの一歩」の幕之内一歩だ。89年に始まった物語はなお続き、「ボクサーのバイブル」のような存在だ。

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「はじめの一歩」を手に取る内藤大助

 作者の森川ジョージは17歳で漫画家デビューしたが、連載は失敗続き。「『ジョー』は超えられないと思い、ボクシング漫画はできなかった。でも、最後は好きなものをやろうと、禁断のジャンルに踏み切った」。23歳の時、一歩が生まれた。

 物語は、一歩が高校の同級生からいじめられる場面で始まる。少年院出身という設定の丈とは対照的だ。「当時は最初からスーパーマンという漫画が多かった。作家として非力な自分を投影し、頑張っていこうよと思える主人公にした」

 特徴はリアルさだ。タイソン、輪島功一らの技も数多く登場。一歩の必殺技「デンプシー・ロール」は20世紀前半の名王者ジャック・デンプシーから取った。一方でギャグも織り込み、悲壮感は抑えた。「実際ボクサーと夜通し遊んだりすると底抜けに明るいから」

 今、森川は「JB SPORTS」ジム会長も務める。15年前、親しい選手から相談されたのをきっかけにつくった。試合でセコンドに入ると、対戦後に相手から「いつも読んでます」「先生の前でいい試合を見せられずにすみません」と言われることもある。

 89年は1200人だったプロボクサーは06年に3200人。日本ボクシングコミッション(JBC)事務局長の安河内剛は「一歩の影響は間違いなくある」。連載開始時はゼロだった日本人の現役世界王者も今は4人いる。

 亀田大毅を破り、一躍知名度が上がった世界王者の内藤大助も愛読者の一人だ。自身も中学でいじめられ、当時は「しょせん漫画。いじめっ子を見返すなんてあり得ない」と思っていた。ボクシングを始めたのは、いじめられっ子から脱出したい一心だった。

 漫画では、いじめっ子が後に一歩の応援団長になる。内藤も当時のいじめっ子が一番応援してくれるという。「性格は違うが、一歩とはかなり重なる。つらい思い出があったから今ここにいる。漫画を現実にできたから、いじめられっ子には希望を持って欲しい」

 森川は言う。「本物の試合を見れば面白いが、ファンが足を運ぶきっかけが必要。一歩がそんな存在になればうれしい」〈敬称略〉

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 はじめの一歩 週刊少年マガジン(講談社)で連載中。いじめられっ子だった釣り船屋の息子、幕之内一歩が、後に世界王者となる鷹村守との出会いからボクシングを始め、成長していく。現在の一歩は日本フェザー級王者で21勝(21KO)1敗のハードパンチャー。同誌の連載作品(同一タイトル)では歴代最多の81巻の単行本が発行され、累計部数は7550万部。

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