現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 外観と一転、広がる異空間 今年開館の2文化施設2007年11月13日11時10分 建物の中に入ると、外観のイメージとは全く異なる空間が――。建築家の山本理顕さん(62)と伊東豊雄さん(66)の設計で、今年開館した二つの文化施設が話題を呼んでいる。21世紀の建築の「本質」を感じさせる力作だ。
■横須賀美術館 浦賀水道から眺めると、斜面の先にガラスの箱が見える。山本さんの設計で今春開館した横須賀美術館(神奈川県)。精度の高さがうかがえるガラス壁を抜けて中に入ると、一転、かまくらの内側といった感じの、白一色の柔らかな空間に抱かれる。 地階から天井まで、ガラス箱の内側に沿うように鉄板の巨大な白い箱が挿入されている。壁と天井の角は曲面でつながり、境は判然としない。円窓が多数開き、浦賀水道を行き交う船が見える場所も。カジュアルな魅力に満ちている。 山本さんによれば、当初はシンプルな四角い箱のような案だった。しかし「多くの人に来てもらいたい美術館には、ある種のエンターテインメント性、意外性が必要ではないか」と考え、鉄板の内部空間を選んだという。 ■多摩美大図書館 伊東さんが設計した多摩美術大(東京都八王子市)の新しい図書館も、この夏に一般オープンした。 アーチ窓を連ねた正面は、打ち放しのコンクリート壁とガラスが完全に面としてそろい、ナイフですぱっと切ったかのよう。緩やかにカーブしていることもあり、ほかでは見たこともないような虚構性を生む。 ところが、中に入ると、やはり印象は一転する。さまざまな大きさのコンクリートのアーチ板を組み合わせて建物を支え、包まれるような空間を生んでいる。1階は洞窟(どうくつ)を、2階の閲覧室は、森を思わせる。伊東さんは洞窟的な空間を実現するためにアーチ状の構造体を選んだという。 両氏が使った鉄とガラスとコンクリートは、工業化社会を背景に20世紀初頭に確立したモダニズム建築の素材。機能的で均質な、無装飾な建築が目指された。 しかし70年代以降、こうした建築は「冷たく退屈」と批判される。いわゆるポストモダンの潮流で、「意外性」をまとった建築も多数登場した。しかし結果的には、さまざまな理屈をつけて歴史的な装飾をまとうような表面処理が中心だった。その点、今回の二つは、建築空間じたいの意外性といえる。 山本さんは、「モダニズム建築の手法が、とりわけ地域や共同体の中心となる建築には、うまく適応できなくなった。だから、空間体験を通して、意外性やシンボル性を生み出せないかと考えた」と話す。 伊東さんも、「20世紀の均質な空間ではなく、もっとトポロジカルにゆがめた空間で、建築を、もう一度自然とつなぐことができるのではないか」と話す。 二つの建物は、現代建築の「転換点」を物語る存在ともいえるのだ。 PR情報 |