現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 川や砂漠に芸術の奇跡 クリスト夫妻の新プロジェクト2007年11月28日15時38分 茨城県の田園地帯に1300本もの青い巨大な傘を立てたり、ドイツの旧帝国議会議事堂を布で覆ったり。クリストさんとジャンヌ・クロードさん夫妻は、見慣れた風景を奇跡的な光景へと変えてきた。作業の打ち合わせで今月来日、講演やインタビューを通し、進行中の二つのプロジェクトへの思いを語った。 1935年6月13日、クリストさんはブルガリアで、ジャンヌ・クロードさんはカサブランカでフランス人家庭に生まれ、今の拠点はニューヨーク。「2人で1人」と言い切る72歳だ。 新プロジェクトの一つが「オーバー・ザ・リバー」。米コロラド州のアーカンソー川の、60キロのうちの10キロの川面に布を張る、という計画だ。布は水面の幅で、両岸の土手から渡されたケーブルで張られる。 州や軍など多方面の許可が09年に下りれば、12年にも夏の2週間、実現させるという。予算総額は55億円前後と見積もっている。 土手の上からなら川面が隠された状態を、岸辺からは布の下に入って頭上を覆う布を見ることができる。布は粗く織られ、空が透ける。川下りをしながら見ることも可能だ。「覆う」と「透ける」が同時に楽しめる点が、特徴といえる。 布を使うことについてクリストさんは、「我々の作品は遊牧民の(布の)集落のようなもので、ほかで作った材料を持ち込んで短期間で展開する。布は常に揺れ動き、柔らかく人を招き入れる」と話す。 「毎回、許可を得るのが一番たいへん」とこぼしつつ、「それよりもまず地元の人に話す必要がある」とも。資金をクリストさんが描くドローイングを売ってまかない、「喜びと美しさの芸術を、自分のために、完全に自由な環境で作る」(ジャンヌ・クロードさん)のが信条だが、その自由は地元の人たちの理解があってこそ、なのだろう。 一方、アラブ首長国連邦の砂漠での実現をねらっているのが、「マスタバ」。頂が平らなピラミッドのような構造物をドラム缶を重ねて造る。その大きさがすごい。高さ150メートルで底面は300メートル×225メートル。ピラミッドをしのぐほどの大きさで、構造体の周りにドラム缶約39万本を積み重ねていくという。 「オーバー……」も含め短期間で終わるプロジェクトが多いが、これは永続的になるという。「すぐに壊すのは高層ビルを壊すようなものだし、イスラム文化は永遠を信じているから」とクリストさんは話す。 実現の時期は分からないが、すべてがスムーズなら、4〜5年でできるかもしれない、という。 仮設性と永続性。現在進行中のプロジェクトは対照的なこの二つだけ。そろそろアーティストとしてまとめの時期に入っているということだろうか。クリストさんの答えは明快だった。 「いや、明日にも、新しいプロジェクトを思いつくかもしれないじゃないか」 PR情報 |