現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 人気の現代美術家 ピピロッティ・リストさん 東京・原美術館で個展2007年12月05日15時18分 キャンディーのような色彩と揺れ動く映像のビデオ作品などで、世界中の国際現代美術展から招かれるスイスの美術家ピピロッティ・リストさん(62年生まれ)。いま東京・北品川の原美術館で、日本の美術館では初の個展「からから」を開いている。現代感覚にあふれた表現について、誠実かつユーモラスに語った。
彼女の名を一躍美術界に知らしめたのは、映像作品「Ever Is Over All」を出した97年のベネチア・ビエンナーレだった。若い女性が南国の植物の幹で、歩道沿いの車の窓を楽しげに割っていく映像は、暴力性とけだるさが官能的に溶けあい、若手作家優秀賞を獲得。いまも鮮烈な印象を残している。 今回はこの作品を含む94〜07年の11点で構成(来年2月11日まで)。それにしても、なぜ「からから」? 「のどが渇いた時にも、笑う時にも使う表現と聞いて、面白いな、と。自分の名前だけの題も退屈だし、タイトルは一番短い『詩』のようなものですし。それに美術館は渇いた心を潤すような場所ですから」 ピピロッティという名も「長くつ下のピッピ」などから自分でつけたものだ。「名前に託された社会的な期待みたいなものから出たかった面もあります」 そう、この「解き放たれたい」という気分は彼女の作品の多くに通底する。 例えば、新作の「星空の下で」。展示室の床全体に、目の回るようなカメラワークで、アパートや公園の映像が現れ、人物の像が一気に鑑賞者の体を包み込み、次の瞬間には、宇宙空間のような映像に切り替わる、といった具合だ。 「人は知識や歴史にとらわれがちだが、足元から違う世界を登場させて、実際に生活する空間とは違う、広い世界があることを示したかった」。「Ever〜」も、むしろ車の暴力性や若い女性の可能性を示した、という。 揺れ動き、浮力すら覚える映像も、持ち味だ。「重力は大きなテーマ。体も、人生も、命も、重力との間でダンスをしているようなものですから」 一方、空間や身体の大小を操作する作品も目立つ。巨大ソファに座りテレビで映像を見る作品「部屋」があれば、箱庭のような作品や床板の小さな穴に仕組まれた画面から女性が「助けて!」と叫ぶ作品も。 ここでもやはり「大きさというのも、あくまでも相対的なもの。『部屋』は、テレビ画面の中では世界が収縮しているイメージから生まれています」と話す。 作品はフェミニズムの観点から評されがちだが、「固定観念がなくなれば、一人一人が生きやすくなる。でも、私もたまには男性にごちそうをしたいし、ごちそうされたい時もある」と話す。身ぶり手ぶりや片言の日本語を交え、カメラを向ければポーズを次々。作品も本人も、しなやかなリストさんだった。 PR情報この記事の関連情報 |