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〈回顧2007:3〉美術 近代「見直し」の動き 「生」を探る試み、暗黙の要請か

2007年12月26日10時30分

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写真1月に開館した、国立新美術館(右奥の壁面が波打った建物)。六本木ヒルズ(左手前)の森美術館、東京ミッドタウンのサントリー美術館と合わせて「六本木アート・トライアングル」とも呼ばれる

 「回顧」と「誕生」の年だった。様々な組織が歴史的な節目を迎え、原点にさかのぼって見直す。今年はそんな機会が重なったのである。

 ○様々な企画展で検証

 まず、日展だ。前身の文展(文部省美術展覧会)は1907(明治40)年に創設。そこからの歩みを、総計296点でたどる「日展100年」展(国立新美術館)が開催された。

 さらに、東京芸術大学。前身の東京美術学校創立から120周年を迎えた記念催事のひとつ「岡倉天心―芸術教育の歩み」展(同大学美術館)は、天心の思想と「目」を、史料や当時の教授や生徒らの作品を通して確かめる企画展だった。

 両者は偶然重なったが、日本が「近代」を達成する際に、教育と、作家の組織化、それに普及という、「美術」の体制の骨格をどう築いたか、その経緯を検証する好機だったのである。

 ほかに、東京国立近代美術館工芸館も、大阪の国立国際美術館も、開館30周年という区切りを迎え、記念展が開かれた。

 「回顧」は、東京国立近代美術館へ巡回中の「日本彫刻の近代」展をはじめ、東京都写真美術館での「夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史」や「昭和 写真の1945―1989」展など諸ジャンルに及んだ。

 ○美術愛好族が大移動

 一方、「誕生」は。例えば、東京・六本木に1月21日に開館した国立新美術館である。国立国際美術館以来となる5番目の国立美術館。ここでも、現代美術の歩みをたどる「20世紀美術探検――アーティストたちの三つの冒険物語」展などが開かれた後、70万人も動員した「大回顧展 モネ」や「日展100年」展と回顧ものが続いた。

 新設の目的のひとつだった公募・団体展は4月から始まり、日展終了までに99万人を集めた。企画展を合わせて296万人(9日現在)と、当初予想を倍近く上回ったが、逆に昨年までの主舞台だった上野の東京都美術館が、11月末現在で公募展、企画展合わせて約60万人も減少した。

 六本木には、サントリー美術館が移転して開館したほか、「2121デザインサイト」もオープン。既設の森美術館を含む「アート・トライアングル」が形成されて「美術愛好族大移動」が起きたと見える。

 公立の、横須賀美術館や沖縄県立博物館・美術館も課題を抱えながらも開館。そんなインフラ整備のなかで「質」はどうだったか。「生きる」が主要テーマだったといえるだろう。生のあり方がひずんでいる時代。生の実感を求め、生の意味を探ることが暗黙のうちに要請されているのか。

 横須賀美術館の開館記念展のひとつはずばり「生きる」展。9人の現代美術家がその答えを探った。「マルレーネ・デュマス――ブロークン・ホワイト」展は、女性の側から見た生のあり方を示した。第2次大戦前の精神状況を凝縮したような「靉光(あいみつ)展」や、19世紀末から20世紀にかけて燃焼させた魂の軌跡を追う「ムンク展」も、その系譜上に位置づけられよう。

 安定した人気は日本の古美術だ。京都・相国寺で「動植綵絵(どうしょくさいえ)」を並べた「若冲展」には長蛇の列ができ、京都国立博物館の「狩野永徳」展も同様。海外流出品も集めた「BIOMBO/屏風(びょうぶ)」展や「鳥獣戯画がやってきた!」展も好評だった。

 ○随所に精力的な活動

 現役では、ロサンゼルス現代美術館から大巡回展を始めた村上隆の活動は特筆されてよい。内外で個展や公開制作を精力的に展開した青木野枝や、山口晃らも記録に値する。大ベテラン篠原有司男の年齢を感じさせない仕事ぶりや、金属を削って積み上げ、異世界を作りあげる榎忠も存在感を際だたせた。

 一方、日展の最後の精神的支柱ともいえた日本画家高山辰雄が95歳で永眠した。また、国立新美術館の設計者であり、同館で個展も開いた建築家黒川紀章が急逝。作り手ではほかに、吉原英雄、桜井浜江、高橋節郎、北岡文雄、小林斗アン(「今」の下に「酉」、その下に「皿」)、前田常作らの悲報が続き、本紙で長く「社会戯評」を担当し、洋画でも知られた横山泰三も鬼籍に入った。ジェンダー論を基礎とした美術史研究を先導した若桑みどりの死も惜しまれた。

 ヨーロッパでは、ベネチア・ビエンナーレと、ドイツ・カッセルの「ドクメンタ12」、同・ミュンスターの「彫刻プロジェクト」といった現代美術界で定評のある大規模定期展が重なった年だった。その国際舞台でも「近代の回顧(見直し)」と「生」がキーワード。ことにドクメンタは、作家選定から若手ガイド育成まで、見落としてきた「空白」を埋め、美術を根付かせる努力が目立っていた。

 翻って、私たちは、十全な近代の振り返りが広く共有できただろうか。

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