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石窟内に「印刷壁画」 中国・甘粛省

2008年01月15日11時05分

 仏教芸術の至宝とも言われる中国甘粛省の壁画群。その石窟(せっくつ)壁画の中に、印刷した紙を張りつけて壁画の代用にしたものがあることが、劉永増・敦煌研究院考古研究所長の調査で明らかになった。このような「印刷壁画」が見つかったのは中国で初めて。世界的にも極めて珍しいとみられ、今後、研究者の注目を集めそうだ。

 「壁画」が見つかったのは、元〜明代(13〜17世紀)にかけ築かれたと考えられている甘粛省粛南裕固族自治県の馬蹄(ばてい)寺石窟群。

 9基ほど現存する石窟のうち、北寺第3窟で、五方仏と呼ばれる密教の仏を多色刷りで印刷した紙が、壁画のかわりに天井近くの壁に張り付けられているのが確認された。

 紙は30×40センチ程度。5体の仏を3列にわたり表現したものと、4体を2列で表現したものの2種が確認された。それらをすき間なく張り重ねることで、描かれた壁画と同じように見える工夫が凝らされていた。

 紙はもともと十数枚あったとみられ、制作時には90体以上の印刷された五方仏が存在していたと考えられるという。

 劉所長によれば、このような印刷壁画が見つかったのは「少なくとも中国では初」。多くの壁画が、下塗りをした壁などに直接描かれていることを考えると、極めて異例で希少という。

 第3窟は、壁画の残り具合や描かれた蓮華(れんげ)文の表現などから元代初期(13世紀後半)のものとみられる。「作業のしづらい天井部分にのみ張られていることから、絵を描く手間を簡略化するために使用したのではないか。異なる五方仏の同じ部分によく似た墨のかすれなどが認められており、版木などで印刷された可能性が高い」

 印刷壁画ではないが、紙に描いた絵を張り付ける「紙本壁画」は、先行する敦煌の莫高窟156窟(晩唐・9〜10世紀)などでも見つかっており、このような手法が唐の時代から、ある程度の地域に広がっていたことがうかがえる。

 今回の研究成果は、敦煌研究院などが03年から実施している「甘粛省内中小石窟調査」で見つかったものだ。調査ではこのほか、墨痕の観察などから、これまで「筆で描かれた」と考えられてきた、敦煌石窟群の壁画の中に、筆ではなく葦(あし)などのペンを使って描いた「ペン描き壁画」が存在することも明らかになった。

 「甘粛省の壁画が従来考えられていた以上に多様なものであることが明らかになってきた」と劉所長は話している。

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