現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 情報整理説く本 人気再燃2008年03月01日11時23分 机の上にあったはずの書類が見つからない、さっき思いついた名案は忘却のかなたへ。情報の整理ができず困った経験は誰にでもある。だからこそ、昔から整理法をうたう本はベストセラーになってきたのか。そして、読めば本当に、解決策は見つかるのだろうか。
■「片づけたい」今も昔も 思考の整理とは「いかにうまく忘れるか」だと、常識を覆す考え方を説いたお茶の水女子大名誉教授、外山滋比古さんの『思考の整理学』の人気が再燃している。86年に出た文庫がこの1年で25万部を増刷、42万部に伸びた。 どれだけ知識を蓄えたところで、コンピューターにはかなわない。今なら誰でも気づくことが20年以上前に書かれている。スクラップやノートの作り方といった実践法も紹介されているが、外山式のポイントは、忘れる時間が「頭の中で自由な化合がおこる状態を準備する」といったユニークな発想だ。 学生から30代までの若い世代が読者の中心。ネット社会で情報があふれる中、「情報を使いこなす方法に走るのではなく、頭の使い方一つで誰でもできるシンプルな考え方が書かれているので、すっと心にしみこむのでは」と出版元のちくま文庫担当者。外山さんは「考えることの大切さに共鳴してくれたのなら、かなり面白い世代が登場してきた」と期待する。 「整理の歴史」を整理した本といえば社会学者、加藤秀俊さんの『整理学』がある。 古代ギリシャは知識の分類に意識的な社会で、その分類学を元にアレクサンドリアの図書館は整理され、70万点のパピルス文献が分類されていた、といったうんちくがいっぱい。日本なら江戸後期に日本史などの文献を分類、収録した塙保己一の『群書類従』を挙げる。整理しないと「ものごとはつねにデタラメの極致にいたる傾向をもっている」という加藤さんの言葉は今でも突き刺さる。 整理学本の古典的存在が、民族学者、梅棹忠夫さんの『知的生産の技術』(69年)だ。大量の情報をカードに書き出し整理する方法は、研究生活から生み出され、「京大型カード」が学生の間でブームになった。しかし、ノンフィクション作家の山根一眞さんでさえ「梅棹式カードを1万枚買ってはみたものの、長続きせず挫折した」とかつて告白したように、実践するのは難しい。山根さんはその後「山根式袋ファイル・システム」を創案、人類の整理との闘いに参戦する。 ■「青い鳥」求めて 70年代までは情報の整理が必要な人は限られていた。分類をまったく廃し、書類を最近使ったものから封筒に入れて時間順に並べるという方法で一世を風靡(ふうび)した早稲田大教授、野口悠紀雄さんの『「超」整理法』が出版されたのが93年。シリーズ354万部という「超」ベストセラーになったのは、まさに、多くの人が情報の整理に追われる時代へ突入したことを示す。 野口さんは「紙の情報の整理法は93年に書いたことがすべて」と言い切る。それでも整理本が次々と出るのは、「モノの整理については、何かよい方法があるのではないかと、みんなが『青い鳥』を求めているから」と言う。「人間は重要なモノを隠そうとする。よく、しまい込みすぎてわからなくなる。しかし、大事なものを隠そうとするのは動物の本能。克服することは非常に難しい」 情報の整理法については、パソコンの検索機能が革命的な進歩をもたらした。検索エンジン「グーグル」が提供するGメールにデータを投げ込むだけで、自分のデータベースができあがるという。キーワードを検索するだけで必要な時に引き出せるから、分類はいらない。現代の課題は「情報をいかに集めるかではなく、いかに集めないか」になったと野口さん。 ■携帯電話に集約 最近のベストセラー『佐藤可士和の超整理術』は、人気アートディレクターが整理の極意はスリム化と説く。スケジュールもメールもすべて携帯電話に集約し、手ぶらが基本スタイル。事務所もスタイリッシュで、デザインはシンプル、ゴミはおろか紙類も見えない。「整理自体が、僕にとっては何よりのエンターテインメント」なのだそうだ。 対する野口さんの研究室は、雑然としていた。「そもそも机を整理しても仕事は進まない。最少の労力で一定の効果があるのが望ましい。怠け者の発想です」 ■人気の「整理本」あれこれ
63年 『整理学 忙しさからの解放』(中公新書) 加藤秀俊(社会学者) 分類せよ PR情報 |