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木村伊兵衛写真賞 生と死を見つめる2人に

2008年03月11日06時26分

 第33回を迎えた木村伊兵衛写真賞は、2年連続で2人受賞となった。世界を明るくとらえた昨年の受賞作から一転、岡田敦さん(28)と志賀理江子さん(27)の作品は、痛々しいほどに「生と死」を見つめる目を感じさせる。

■岡田さん 若者たちをリアルに

 受賞作『I am』では、若い女性の顔、裸体、そして自傷行為の跡が刻まれた腕が、生々しく見るものに迫る。

 被写体はウェブでの募集に応じた10〜20代の約50人。衝撃的な写真のあまり、全員が自傷行為の経験者にも見えるが、そうではない。岡田さんは「今を生きる若い人たちのありのままの姿を撮った。決して特別なものではない」と話す。

 自分たち若い世代が現代社会に感じているリアリティーを一貫して撮り続けてきた。第29回木村伊兵衛写真賞の最終選考に残った『Cord』は、ウェブ上で交わされた自傷行為者たちの言葉を引用し、写真と組み合わせて表現。「私を撮ってほしい」という反響がメールで多数寄せられ、受賞作を生む契機となった。

 写真集の表紙には特殊な紙が使われ、手にした人の顔を鏡のように映す。「あなた自身もこの写真集に登場するひとりなのだというメッセージなんです」

■志賀さん 想像超える場面演出

 写真一枚一枚に圧倒的な映像力がみなぎる。

 受賞対象の写真集2冊のうち『Lilly』は、ロンドンで住んでいた公営団地の住民に被写体になってもらい、そのプリントをさらに撮影した作品などで構成する。『CANARY』では、仙台、オーストラリア、シンガポールで住民たちに個人的な質問をし、答えに示された場所をたどりながら撮影していった。

 共通するのは、まったくの他人との共同作業を介しながら、被写体に演出を施していくスタイル。一枚ごとに多大な時間と労力を費やし、イメージを構築していく。「自分の想像力には限界がある。それ以上の光景を得るために、予測不可能な状況を自ら仕掛けて作り出すんです」。かつてクラシックバレエで振り付けを受けた経験も強く影響しているという。

 志賀さんにとって「写真は生」だという。「私は死に向かう存在。だから止まった時間を作る写真という生にすがりついているんです」

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