現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事

「通路」が主役 ベニヤ板千枚の壁、川俣正さん展示会

2008年03月27日14時38分

 展示室には絵を掛けるためのような仮設の壁がずらり。でも絵は掛かっていない。現代美術家の川俣正さん(54)が東京都現代美術館で4月13日まで開いている展覧会は、延々と続くベニヤの仮設壁が、いやその間に生まれる通路が主役。だから「通路」展。30年の作家生活を経た、現代美術への思いが込められている。

写真川俣正さん=東京都現代美術館で、安藤由華撮影
写真川俣正展の会場

 高さ240センチ幅120センチのベニヤ板約1000枚の壁で、会場はさながら迷路。といってもゴールはなく、壁が作る「通路」は、狭まったり広がったり、分かれたりつながったり。その合間に川俣さんの過去の仕事の写真などが展示されている。

 過去の仕事――。欧米の古い建物に木材を貫入させて異化したり、オランダの湿地帯でアルコール依存症患者らと木製の遊歩道を作ったり。多くは「サイトスペシフィック(場所に固有)」な作業といわれた。

 が、今回は場所の文脈がない。「サイトスペシフィックに飽きてね。なんか言い訳めいていて。社会的なアートとか住民参加とか、少なくとも今はうんざり。みんなやっているしね」

 川俣さんがこうした仕事を始めたころは、周囲の人たちが「アートに唐突に出くわした違和感を抱き、美術家を試すようなところがあって、面白かった」。

 「でも最近は、現代美術で地域づくり、みたいな状況がある。やる側も見る側ももの分かりがよすぎる。『ウエルカム!現代美術』は何か違うな、と」

 05年の横浜トリエンナーレで総合ディレクターを務めた経験も作用している。「会場の巨大な倉庫にどうやって人を招き入れ、人の流れを作るかばかり考えていた。だったら仮設壁だけで人の動きを見せるような展覧会が作れないか、と」

 で、「通路」という概念に思い当たったという。

 「考えてみたら『通路』ばかり作っていた。『パッサージュ』みたいな格好いい言葉じゃなくて、土木的な『通路』。この言葉で自分の30年も批評してみた」

 会場では、仮設壁の裏に写真が展示されていたり、通路を横切る人が垣間見えたり、突然、カフェに出くわしたり。川俣さんの身体感覚で作り上げた「通路」は、「アートと地域」といった具合に何かと何かをつなぐのではなく、純粋に「通路」そのもの。

 疲れ切った横浜トリエンナーレの後、日本を脱出したくなり、昨秋からパリ国立高等美術学校の教授を務める。

 作家生活30年、今回は一つの集大成ですか?

 「いやあ、また次に行く途中の『通路』ですね」

PR情報

この記事の関連情報

このページのトップに戻る