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さよなら洋館レストラン 黒沢明、池波正太郎が通った店

2008年05月06日09時02分

 東京・銀座のど真ん中に戦後間もなく建てられた西洋料理店「みかわや本店」が、取り壊される。隣接する三越銀座店が新館を増築するためだ。ツタがからまるしゃれた洋館には、作家の池波正太郎さんら昭和の文化を築いた著名人が訪れた。有名ブランド店の出店・改装ラッシュの銀座から、古き良き面影がまた一つ姿を消す。

写真「みかわや本店」と店主の渡仲耐治さん。今は取り壊し工事のための壁で覆われている=東京都中央区銀座4丁目、上田幸一撮影

 1948(昭和23)年、今の店主渡仲(となか)耐治さん(63)の父親が銀座4丁目に開いた。戦後の焼け野原に木造の白い洋館。銀座にトウモロコシ畑があった頃だ。幼かった渡仲さんは、母親に連れられて店を訪れた時のことを覚えている。料理人として腕をふるう父親と店は輝いて見えた。「かっこいいなあ、と誇らしかった」

 食糧難の中でも、味のわかる客に応えようと食材の調達に力を入れ、当時は珍しかった銀製の皿も使っていた。開店以来、カニクリームコロッケに旬の野菜を添えた「カニコロケット」が変わらぬ人気メニューだ。

 ビルの谷間の2階建て。30年前に植えたツタが壁のすき間から店内にも入り込んだ店には、日が落ちると、黒沢明監督や歌舞伎役者、文人、銀座のだんな衆が集った。

 銀座で長く飲食店を営む男性は「昔からすごくモダンだった」。幼い頃、祖父にごちそうしてもらった東京都文京区の浪越夕起さん(51)は「鹿鳴館のような雰囲気の店だった」と懐かしむ。

 3月末の営業最終日には店を惜しむなじみ客が詰めかけた。「昔、初めての給料で両親にごちそうしたとき、あの席に座った」「亡くなった父と一緒に来た」。次々語られる思い出に、渡仲さんは胸が熱くなったという。

 跡地周辺には、三越が地上13階、地下6階の新館を建てる。完成は10年秋。店はその中で再スタートを切る。

 「銀座は古いものと新しいものがミックスするだけでなく、競争して、いいものが残る街。いつまでも悲しんではいられない」。銀座の未来に思いをはせる渡仲さんは当面、近くにある「みかわやニューメルサ店」に立つ。(大井田ひろみ)

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