現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 デジタルで変わる美術館 新たな見せ方、本物と違う発見2008年05月04日22時22分 ずらりと並ぶ古今東西の名画はすべて精巧な複製品で、専用レンズを向ければ過去の修復跡まで浮かび上がる。そんな時代が、もうそこまできている。発展し続けるデジタル技術の助けを借りて、美術館や博物館が新しい鑑賞スタイルを模索している。
■陶器の修復、映像で 午後4時半、東京・五反田の大日本印刷(DNP)。パリと東京を結ぶテレビ会議が始まった。通訳を交えた議論は5時間続くこともある。ルーブル美術館とDNPの共同プロジェクト「ミュージアムラボ」のスタッフたちだ。 ルーブルが2年後に開設するイスラム展示室や、北フランス分館の新しい展示方法を共同研究しており、作品の魅力や背景を深く伝えるデジタル技術の使い方を話し合う。 「ミュージアムラボ」は06年に始まり、成果をすでに4回発表した。最近は、9世紀のイスラム陶器にカメラ付きのパソコンを向けると、修復の様子が分かる映像を、陶器に重ねてパソコン画面に映し出す技術を実用化した。 ルーブルのアンリ・ロワレット館長は、「最新のデジタル技術が美術品の理解にどのように役立つか。それを世界の美術館に先駆けて実験している。鑑賞の新しい基準を作りたい」と話す。 「門外不出」級の作品を所蔵する外国の美術館が日本企業を頼る例は後を絶たない。作品の劣化を防ぐには、展示を制限せざるを得ないが、複製なら気兼ねなく展示できる。企業にとっても美術品は、自社技術の発揮・宣伝の対象として最適だ。 イタリア・フィレンツェのウフィツィ美術館は、日立製作所と組んで「受胎告知」を含むレオナルド・ダ・ヴィンチの3作品のデジタル画像を制作。3点とも昨年、東京・上野のダ・ヴィンチ展で展示された。日立はフィレンツェ大学と共同で他の作品のデジタル化にも取り組んでいる。 プロジェクトを率いる日立の森岡隆行さんは「イタリアの学会で成果を発表したら、高精細画像で見てこそ分かる、新しい発見があると指摘された」と話す。 ■館外へ飛び出す複製 最新のデジタル技術で複製した名画や名品は、美術館の外に飛び出していく。 先月21日までイタリア・ミラノで開かれた世界最大規模のデザイン見本市「ミラノ・サローネ」には、日本の国宝級の名画が展示された。「松林図屏風」(東京国立博物館蔵、国宝)と「八橋図屏風」(メトロポリタン美術館蔵)、「老梅図襖」(同)の3点で、いずれもキヤノンの大判プリンターで原寸大に印刷し、金箔(きんぱく)の加工や表装を施した複製品だ。 京都国際文化交流財団がキヤノンと3カ年計画で進める「文化財未来継承プロジェクト」の第1期の成果で、その活用はオリジナルを所蔵していた博物館などに任せている。 今年3月末にはモネの「睡蓮」など国立西洋美術館(東京・上野)が所蔵する名画約20点の複製がエプソンの技術協力で出力され、六本木の東京ミッドタウンで展示された。 青柳正規館長は「どんな名作も、混雑した館内で遠くから見たら本物のオーラを感じられない。デジタル技術を使えば、作品を拡大し、画家が得意な色を強調することもできる。本物では見落としてしまうところを新発見することもあるんです」と言う。同館は独立行政法人となって8年目。予算は減っているが、「座して暗く沈んでいてもしょうがない。デジタルで観客層を広げたい」。 円山応挙の障壁画を複製した「応挙館」がある東京国立博物館の金子啓明特任研究員は「複製は、迫力で本物に及ばないが、一年中展示でき、近づいても、強い照明をあててもいい。教育的効果は大きい」と指摘する。(秋山亮太、古賀太) PR情報文化・芸能
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