
6年前に39歳で急死した消しゴム版画家ナンシー関さんの「大ハンコ展」が東京・渋谷のパルコファクトリーで開かれている。都内のアトリエに残されていた原版が実に5千点余り。彫り跡は鮮やかで、有名人の似顔絵に添えられた特徴的な一言が、いまなお生々しい。
展示品の大半は刷られたことのある消しゴムで、雑誌や新聞を飾った作品ばかり。青森から上京後、12年間一緒に住み創作を見てきた妹の米田真里さんは「ビデオ録画したテレビ番組を一時停止、トレーシングペーパーを張って写し、縮小コピーしてから彫っていた時期もありました。構図が決まれば10分以内で仕上げていた」と振り返る。
いずれも市販の消しゴムをカッターナイフで彫っており、見て、彫る、その繰り返しの集大成だ。これだけの原版が公開されるのは初めてで、同郷の版画家棟方志功の集中力をほうふつとさせる。
文章も切れ味が鋭く、テレビ評や人物評が読み返され、関連書の出版は死後も相次いでいる。展示室には仕事場が再現され、十代のころから愛聴したビートたけしの深夜ラジオ番組「オールナイトニッポン」の録音テープも残されている。
版画では辛口であっても、彫り跡から、モデルとなった人物への愛情の深さがうかがわれるようで、大回顧展の趣すらある。15日まで。(秋山亮太)