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「AERA」と「週刊SPA!」 時代の不安映し20年

2008年6月3日12時23分

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 「AERA(アエラ)」(朝日新聞出版)と「週刊SPA!(スパ)」(扶桑社)がともに創刊20年を迎えた。硬派と軟派、一見志向が異なるようで、激しく移り変わるライフスタイルを読者目線でつかもうとしてきた点が実は共通する。読者層の中心も、平成不況で憂き目を見たロストジェネレーションから40代ぐらいまでとほぼ同じ。雑誌不況を生き抜く両誌の20年の変化を振り返ってみる。

◆不況でテーマ内向きに

 数年前から「SPA!」には下流社会が広がっている。

 「仲間うち『年収格差』の非情」(08年2月)、「『土日が虚(むな)しい』症候群」(07年1月)、「『好きになれる女がいない』男たちの迷宮」(06年10月)。同じ大学を出たのに30歳を過ぎると収入差がつきギクシャクする。せっかくの週末は起きたら夕方だった……。男性たちの本音は切なくてなんとも心細い。

 「勢いで会社を辞めちゃった人のその後」や「人生『降り組』たちのその後」などもよく読まれた企画だそうだ。「ネットでは拾えないような他人の人生の『その後』を代わりに追いかけていく」。光明康成編集長は「SPA!」の役割をそう考える。

 「AERA」は、「働く女性の20年 管理職が悩む私生活おきざり」(08年6月)で、キャリア女性が仕事と家庭のバランスに悩み、「小1で直面する専業主婦母と働く母隔てる壁」(同)では、立場の異なる母親同士が価値観のギャップに悩む。ほかにも「低下する女性の幸福感」(06年1月)、「結婚するなら『三低男』ノススメ」(05年7月)など。ちなみに「三低男」とは「低姿勢、低依存、低リスク」。

 両誌が創刊された88年には「Hanako」「日経WOMAN」も誕生した。男女雇用機会均等法の施行から2年、職場に女性が進出し始めた。バブルだった。そして昭和が終わろうとしていた。

 「AERA」の創刊号はソ連のアフガニスタン撤退など国際ニュースが中心で、「SPA!」は木村太郎・久米宏対談や、「タモリのゴルフ天国」という見出しが並ぶ。「ヤンエグ族」(89年6月)という言葉にバブルの香りがする。

 「SPA!」の連載はたびたび社会現象となった。「オヤジギャル」を流行語にした中尊寺ゆつこ「スイートスポット」は89年スタート。92年には小林よしのり「ゴーマニズム宣言」が始まる。00年からの倉田真由美「だめんず・うぉ〜か〜」は現在も続く。バブル崩壊以降は「サボテン女」「出世したくない症候群」など独特の造語でテーマ設定した特集が目立つ。

 「AERA」が女性のライフスタイル特集へとかじをきるのも平成不況と重なる。「人々の関心事が国際ニュースからどんどん内向きへ変わっていった。いま何がニュースかというと自分なのです」(尾木和晴編集長)。04年は「負け犬」「ヨン様」にわいた1年。「『負け犬女』はどっちだ」と題した酒井順子と小倉千加子の対談を皮切りに「負け犬」関連の特集が続いた。

 作家の亀和田武さんは両誌を「対象が女性か男性か違うだけで、とても似ている」と感じている。中づり広告のインパクトで勝負してきた双璧(そう・へき)とも。「1週間ほど後の空気を先読みして、○○症候群などと名前を与える才覚があった。実際にあるかどうかはともかく、あるかもしれないという仮想現実で特集を作っていく。ともに『心』の時代にうまく対応してきた」

 『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』などの著書がある中央大教授の山田昌弘さんも「どちらも不安定さに対応してきた雑誌」と言う。「創刊当時は生き方の選択肢が増えることがバラ色に見えていたが、20年たって、多様なライフスタイルは、一部の勝ち組をのぞけば、不安定なんだとみんなが気がついた」。就職も、結婚も、どんな選択肢があり、その選択で正しいのか、誰にもわからない時代。「『SPA!』と『AERA』は選択したその後の成功と失敗、両方を見せてくれる。それが今様だったのでしょう」

 好きな人を聞いたアンケートでは「AERA」は国際協力機構(JICA)理事長の緒方貞子、「SPA!」はマリナーズのイチローが1位になった。頑張りすぎてしまうキャリア女性と、気力も収入もいまひとつな男性たち。「アエラ女」と「SPA!男」の間に恋愛や友情は生まれにくそう。でも「将来が不安、という覚悟ができている同士」(山田さん)という点では、わかりあえる気もしてくるのだ。(中村真理子)

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