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「少年ケニヤ」山川惣治 生誕100年の回顧展

2008年6月4日14時36分

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 絵物語「少年ケニヤ」などで知られる山川惣治(1908〜92)の初の本格的な回顧展が東京都文京区の弥生美術館で開かれている。生誕100年を記念し原画や出版物など約400点が集められた。敗戦から間もない昭和20年代に少年たちをとりこにしたヒーローに会うことができる。

 「少年王者」に「少年ケニヤ」。猛獣が群れをなすアフリカの密林で、親とはぐれた日本人の少年……。山川の代表作の主人公は同じ境遇だ。身にまとうのは腰布だけ。手にはナイフ一つ。その姿は敗戦ですべてを失った日本そのものだったのかもしれない。

 「水泳の古橋選手、ノーベル賞を受けた湯川博士、そして絵物語の山川さん。この3人を抜きにして昭和20年代の少年の心象風景は語れない。勇気づけられました。夢中でしたね」と国立歴史民俗博物館の春成秀爾名誉教授。

 どんなに過酷な環境に置かれても、くじけない。体は小さいが、知恵と勇気で、象やゴリラを仲間にして、時には白人の少女まで助ける。細密で躍動的な絵は全国の少年に夢とロマンを届けた。

 山川さんのスタートは、紙芝居だった。22歳ごろで、評判を呼び雑誌の仕事が舞い込む。そのうち絵の中に物語の説明文を織り込む表現を開発。紙芝居の表と裏を一緒に載せるという発想の「誌上紙芝居」で、39年に「絵物語」と名を変える。

 「少年王者」が世に出たのは47年だった。それまではストーリー主体だったが、この作品を通し、絵が中心の構成に変わった。「ノックアウトQ」は49年の連載開始。恵まれない少年が努力を重ねボクサーになり、米国に渡り活躍する物語。53年には「少年ケニヤ」の雑誌連載500回記念の大会が日比谷公会堂で開かれ、絶頂を迎えた。

 今回の企画をした同美術館学芸員の中村圭子さんは生前に何度か山川に話を聞いた。「いつかはいいことがあるものです」との言葉が印象に残るという。

 福島県から夜逃げのように上京したのは、父が相場で失敗したからだった。紙芝居を描き始めたのも詐欺にあったため。小学校を出るとすぐに奉公に出て、兄と菓子店を開きたいと蓄えた資金をだまし取られてしまった。自分で始めた出版社も倒産。晩年は経営していたレストランが破産し、借金返済に追われた。波乱に満ちた生涯だが、若い日の詐欺被害がなければ、作家としての山川も、なかったのかもしれない。作品の主人公に負けない人生だ。

 29日まで。休館は月曜。電話03・3812・0012。(渡辺延志)

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