
ゆらゆら揺らめく星のかたちのこもれび、深呼吸したくなる針葉樹の清涼な香り――。都内で開催中の個展「森を遊ぶ」(7月15日まで、すみだリバーサイドホール・ギャラリー)は、都会にいながら、鑑賞者を森の奥深くへといざなってくれる。
準備のために山に入り、森で働く人たちと歩いた。鹿の角、小動物がかじった木の実、40年ほど前に捨てられたビールの空き缶……。「フィールドサインを読み取っていると、いま森に住む動物と、昔いた動物や人が重なり合って層になっているよう。山の中は時間の流れがまるで違う」。見つけた痕跡は、「森さん家」の門に見立てた会場入り口を入ってすぐの「飾り棚」に並んでいる。
森には、心地良さだけではなく、薄気味悪いものを感じた。そこで、いろんな表情をみせる森のイメージを作品にした。例えば、自然に任せるとダメになる森もある。植林した山は、日本の森の一つの姿。杉の葉を敷き詰め、皮をはいだヒノキを整然と並べた空間は、管理されたなかでの「美しい自然」を表している。
06年、東京から山梨県早川町に一家で移り住んだ。時間に追われず、身近なものをじっくり見たかったから。感じたり触れたりすることで見えてくるものでなければ、リアルな作品は生まれないと考えている。
自然や科学を意識した作品制作に目覚めたのは、芸大卒業後のフランス留学がきっかけ。「自然の摂理は世界共通。言葉なくして世界の人に訴えられるものをつくりたい」。現代社会では、物事は計算式から導き出される。逆側から眺めて、昔の人のように自然を観察して得た情報をもとに表現したい。(青山祥子)