「深鉢形土器」(縄文時代、山梨県立考古博物館蔵)
平田一式飾「大蛇退治」
伝岩佐又兵衛「浄瑠璃物語絵巻」(江戸時代、MOA美術館蔵、部分)
「飾り」の展覧会と聞けば、装飾豊かな工芸品の数々が思い浮かぶ。その期待にたがわず、絵付けのやきもの、蒔絵(まきえ)、かんざし、印籠(いんろう)、さらに屏風(びょうぶ)、着物などが並ぶ。幾度かの展示替えを経た現在でも、国宝・重要文化財を含む約160点を堪能できる。それだけで十分に眼福と呼べるが、今回の展示からは、飾りの多様性、あるいは逸脱ぶりも読み取れる。
最初の展示が、ぐっと古い縄文式土器であることに軽く驚く。それでも、おなじみの国宝・火焔(かえん)型土器なら予想範囲内。しかし、重文の「深鉢形土器」(山梨県立考古博物館蔵)の流麗な文様はモダニズムにも通じる洗練度で、のっけから、飾りの幅広さを思い知らされる。
新しい方では、大量の陶磁器などをめでたい「つくりもの」に仕立てる「平田一式飾」。18世紀末から島根県に伝わる技による新作「大蛇(おろち)退治」は、器の絵柄や形をうろこなどに見立て、ぐっとポップ。携帯電話のデコレーションもすぐそこ、と思わせる。
派手な点では、重文・江戸時代の伝岩佐又兵衛「浄瑠璃物語絵巻」(MOA美術館蔵、部分)も目をひく。義経の恋愛譚(たん)が題材だが、室内の障壁画や衣装という装飾を、毒々しいまでの色づかいで、改めて絵画として装飾的に描き直す。「平田一式」ともども、飾りの多重性が浮上する。
戦場という極度に「現実」的な場にも、飾りは登場。巨大な燕尾(えんび)をはりつけたような造形の兜(かぶと)などは、SF映画に出てもおかしくない。鉄という素材を究極にまで磨き上げた日本刀を、抽象美と位置づけているのも興味深い。
他方、つぼや香炉などを座敷にどう飾るかを図説にした「十二ケ月床飾図巻」(江戸時代)などは「飾りの飾り方」指南書。つい細部の超絶技巧に視覚が集中しそうなときに、「飾り文化」全体を見渡す広角視野を与えてくれる。
「日本美の情熱」といいながら、あまり日本の特殊性を強調せずに、「飾り」を多層的に読み込める展示は、眼福であると同時に脳福でもある。(大西若人)
◇13日まで、東京ミッドタウン内のサントリー美術館。火曜休み。京都、広島に巡回。