林真理子さん=東川哲也撮影
柳原白蓮や下田歌子ら女性の生きる姿を描きながら、その時代の様子をあぶり出してきた作家林真理子さんが、今度は女優浅丘ルリ子に照準を合わせた。小説『RURIKO』(角川書店)は「最後の映画女優」を核に、石原裕次郎や小林旭、美空ひばりが登場する実名小説でもある。
小説は旧満州の地から始まる。浅丘ルリ子、本名浅井信子が4歳の時。「すごい美人になりますよ。きっと女優にしてください」。満州映画協会理事長の甘粕正彦が父にそう語った。“予言”は戦後、実現する。
昭和29年に日活のオーディションに受かり、デビューしたルリ子。調布撮影所の食堂で石原裕次郎と出会い16歳で初恋を知る。看板女優として睡眠時間3、4時間という中での小林旭とのデート。美空ひばりとの深夜の電話。どの場面もタイムマシンで見てきたようなリアルさだ。
ところが、9割8分は作家の想像の産物だという。浅丘本人に数回インタビューしたが、「忘れちゃった」の連発だった。「ルリ子さんはぴりぴりした大女優だと思っていた。それが野心も裏表もなくて、宝石やブランド品にも興味がない。物事に執着しない人なんです」
主人公があっさりしている分、裕次郎、旭、ひばりの豪華脇役陣が濃い味を出す。「4人の心理劇にして、私なりに捕まえた人物像を出してみせる」と覚悟した。事実よりも本当らしい話。その想像力に舌を巻く。「小説家、見てきたようなウソをつき、です。きっかけをもらったらいくらでもウソが紡ぎ出せないと作家にはなれません」
キッス、アベック、ランデブー、ガウンなど懐かしい言葉とともに、昭和30年代の雰囲気が醸し出される。
だが映画は斜陽の一途をたどり、やがてルリ子の前に現れたのは、テレビのスター石坂浩二。ブランデーグラスやキャバレーから、ワイングラスとフランス料理の世界へ。石坂の出現で時代はくっきりと変わる。
大スターがいてかっこよかった、この近い過去を知らない若い世代にも反響を呼んでいる。「50歳代の女性作家の底力を見せてやろうじゃないのという気持ち。若い作家には書けない厚みやふくらみを出したい」(吉村千彰)