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サウジ 始まった絵本作り 9・11後の「表現の自由化」反映

2008年8月9日15時12分

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 イスラムの戒律が厳しいサウジアラビアで、独自の文化と結びついた絵本をつくる試みが始まっている。同国西部の都市ジッダの絵本作家で児童書出版社を設立したサラヤ・バトラジさん(32)は、地方の村やイスムラの祭りを題材にした絵本を発表し、国内で関心を集めている。

     ◇

 04年に絵本『飛んでいったふうせん』を出した。風船を飛ばして泣く女の子と、母親のやりとりが印象的だ。初版3000部が売り切れた。

 初版は舞台も登場人物も西洋調だった。第2版では同じストーリーだが、絵はサウジの南西部にあるアシール地方を舞台として、母子にもスカーフをかぶらせて描いた。「子どもの生活を現実感を感じられるようなものにしたかった」と語る。印刷部数を5000部に増やした。

 07年の絵本『さあ、お祭りだ』では、イスラムの祭りを題材にした。主人公の男の子が父母と共に、家の飾り付けをしたり、市場に特別のお菓子を買いに行ったりする準備の様子を描き、わくわくする気持ちが伝わってくる。

 「絵本はサウジでは欧米の文化と考えられてきたが、やっと絵本で子供たちが独自の文化や伝統に親しむ重要性も理解されてきた」と語る。

 サウジでは偶像崇拝を禁止する宗教のもとで、人物を描く絵画教育には制約がある。バトラジさんは独学で絵の勉強を始め、自費で英国やマレーシアの講習に参加した。

 01年9月の米同時多発テロでサウジ人が実行犯の大半を占めた。その後、国内で強硬派の宗教勢力が抑えられ、表現の自由化が進んだ。子供の自由な発想を促す絵本への関心の高まりも、「9・11」後に現れた変化の一つだ。

 ただし、伝統的価値との摩擦はある。03年に出した絵本『朝の秘密』では、逆立ちした子供の絵に「時には物事をひっくりかえして考えることが役に立つ」と書いた。情報文化省から出版社に「この表現は子どもが規則からはずれるのを助長するのでは」という疑問が出されたという。

 それでも昨年末、情報文化省が初めて『サウジの児童文学の作家画家ガイド』を出し、バトラジさんが制作を手がけ、自ら挿絵を描いた。今年4月には英国のロンドン・ブックフェアに「国際青年出版人賞」の候補として招かれた。「少しずつではあるが、サウジ国内でも子供の本への関心が高まっている」と、手応えを語った。(編集委員・川上泰徳)

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