東京・上野の国立西洋美術館で「コロー 光と追憶の変奏曲」展が開かれている。フランスのカミーユ・コロー(1796〜1875)の油彩画を中心に94点と、その影響を受けた画家の作品25点によって、新しい画家像を提示している。
■流派や運動を超えた個性
コローはこれまで日本では、バルビゾン派としてミレーと並ぶ風景画家と分類されることが多く、個展もほとんど開催されていない。今回の展覧会を見ると、流派や運動を超えた個性的な画家であることがわかる。
初期の小ぶりの風景画は、同じ建物を違う時間に描いてみたり、造形的効果を出すために大胆な省略をしたり、何げないイタリアの風景画にその実験的な精神が見て取れる。
3回のイタリア旅行を経た後、フランス各地の風景を描く。審美的な観点から描く位置を吟味し、毎回均衡のとれたフレーミングを見つけ出す。本展では、コローの横に突然ほかの画家の絵が並べてある。例えば、池と木々を描いた絵の横に突然シニャックの似た構図の絵があり、街の大通りと教会を描いた絵のそばに、シスレーの絵が現れる。モネ、ルノワール、ドラン、ゴーガン。見ていると時にコローか迷うほど、その射程の大きさが明らかになる。
風景画家として有名なコローだが、今回の展覧会では肖像画も見るべきものが多い。「青い服の婦人」は、ほかの画家のためにポーズをしているような不思議な構図のうえ、ドレスのひだなど大胆な筆致が目立つ。この部屋にピカソやブラック、マティスが展示されているのもうなずける。最後の部屋の「想(おも)い出」の連作は、コローが生涯に見た各地の風景を心の中で再構成しているような象徴性を持つ。まるでコローが評価しなかった若き印象派の画家たちの影響を受けたかのようだ。
この展覧会の監修者の1人、ルーブル美術館のバンサン・ポマレッド絵画部長は「これまでのコローへの偏見を捨てて素直に絵を見てもらえれば、音楽のような絵のリズムが聞こえてくる」と言う。日本側の監修者、三菱一号館美術館準備室の高橋明也館長は「1人で19世紀の美術史を体現するような大きな存在であることを、この展覧会でわかって欲しい」と語る。フランスや米国を中心に内外の40以上の美術館から秀作を集めた労作と言うべき展覧会だ。(古賀太)
◇
8月31日まで、その後神戸市立博物館に巡回。