馬が、犬が、そしてハトまでが「出征」してゆく。一方、各地の動物園では、危険動物としてライオンや象などの駆除が次々と実施されていた――。東京・九段下の昭和館で開催中の企画展「戦中・戦後をともにした動物たち」は、先のアジア・太平洋戦争が人間だけでなく、動物たちにも大きな犠牲を強いたことを教えてくれる。
部屋の中央に並んだ2頭のライオンの剥製(はくせい)が痛々しい。エチオピア皇帝から贈られたというアリ(オス)とカテリーナ(メス)は、東京・上野動物園で1943年から始まった猛獣処分の際に毒殺された。また、牙だけが展示されているアジア象のジョンは、毒入りのえさを食べなかったため、飢え死にさせられたという。いずれも空襲を受けた際に危険とされて行われた処置だ。
農村で欠かせない働き手だった馬も徴発された。飼い主に送られ、並んで出征する馬たちの写真がある。
犬も軍用犬として出陣した。当時の新聞は「お国の急に殉じようと、ワン公が揃(そろ)つて晴れのお召しに応じた」と、飼い犬たちの応召を報じる。「でも、そのまま殺されて、毛皮や食肉にされた犬もあったようです」と企画した渡邉一弘企画係長。さらに、防寒服などに毛皮を使うため、兎(うさぎ)の飼育とその供出を呼びかけたり、伝令用の軍用バトの飼育を進めたりする運動も実施された。
展示は動物たちの犠牲を淡々と語ったあと、戦後、インドから送られて、子どもたちに夢を与えてくれた象・インディラなどの紹介で終わる。命の大切さについて考えさせられる展覧会だ。
31日まで、月曜休館。企画展のみは無料(常設展示は有料)。(宮代栄一)