写真、ぬいぐるみ、古着、編み物などを組み合わせて異空間を作るフランスの美術家アネット・メサジェさん(64)の個展「アネット・メサジェ 聖と俗の使者たち」が、東京・六本木の森美術館で開かれている(11月3日まで)。
70年代初めから立体作品を作り始めて、40年近く。2005年のベネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞した。今回は、初期から最新作まで見せる日本で初めての大規模な個展。3週間日本に滞在し、約30作品を自ら設置した。
「パリのポンピドー・センターから始まった国際巡回展だが、場所にあわせて展示を変えます。(森美術館のある)53階での展示は初めてで、興奮した。『吊(つ)るされた者たちのバラード』では、窓からの景色を利用しました」
68年の5月革命の影響を受けて作品を作り始めた。「当時は女性が美術をやることに反発は強かった。20世紀はろくなことはなかったけれど、女性解放は数少ない収穫」
子供の思い出が詰まったようなオブジェを使う。一見かわいらしく見えるが、よく見ると生々しかったり、痛々しかったり。「アートにならないような日常品から選ぶ。私たちはみんな死んだ子供みたいなもの。子供のころの繊細な感覚がよみがえるような形をめざします」。捨てられた物を集めてきて不気味な作品を作るので、フランスで「魔女」と呼ばれたことも。
最近は、機械を使った大がかりな動く作品を手がける。「社会がますます悪くなるので、その思いを表現しようと思ったら、動く装置が必要になりました。牛海綿状脳症を扱った『つながったり分かれたり』は人間社会への痛烈な批判です」。5月革命の精神が、ほっそりした体に今も脈打っている。(古賀太)