現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 文化
  4. トピックス
  5. 記事

風通しよく、現代美術 自由な企画展、作家の手で

2008年9月3日14時24分

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真所沢市の境界をかたどった伊藤誠「皮膚」。奥に、手塚愛子「織物をほどく―peel」が見える

写真木村幸恵「私幽霊、ところざわ」の展示

 状況に左右されずに発表できる場を、美術家自身の手で――。戸谷成雄さん(60)や遠藤利克さん(57)ら、実力派の現代美術家たちが、隔年開催の自主企画展「所沢ビエンナーレ」を来年から始める。埼玉県所沢市の旧車両工場では今、そのプレ展「引込線」が開催中で、会場にはやけにすがすがしい空気が漂っている。

 高い天井からの光、むき出しの鉄骨。西武鉄道の旧所沢車両工場は所沢駅西口から徒歩2分。現代美術展にうってつけの大空間と、昭和30〜40年代建設という時間を感じさせる。その床に、同市の境界を段ボールでかたどり一ひねり加えた伊藤誠さんの立体や、家具を使った窪田美樹さんの彫刻が置かれ、天上からは巨大な布の糸をほどいた手塚愛子さんの作品が下がる。2棟約2300平方メートルで、16人が展示している。

 ことの起こりは昨年、今展の実行委員長・中山正樹さん(63)ら、所沢近辺に暮らす作家が、酒の席を持ったことによる。現在の美術状況への疑問を語り合い、「地元で展覧会ができないか」という話に。市に相談に行ったら、旧車両工場を紹介され、すっかり気に入ったのだという。

 副委員長の戸谷さんは「現代美術は活況にも見えるが、イラスト的な作品による大衆迎合や投機的な動きもある。状況に左右されずに落ち着いて考えて発表できる場を作りたかった」と話す。同じく副委員長の遠藤さんも「アートは、表現を掘り下げることが重要」と指摘し、自らは鏡を使った大作を展示した。

 「ビエンナーレ」と銘打ったが、準備の時間も資金もない。計80万円の助成金以外は、出品作家が1人5万円を負担、カタログに執筆する評論家らも“執筆料”を支払う。まずはプレ展を開き、実績をつんで評価を得て来年につなげたい、という考えだ。

 ベテラン7人が実行委員となり若手らにも声をかけた。展示のテーマはない。素材も違うし、世代も違う。だから展示はよくも悪くもバラバラ。

 チェーンソーで刻んだ荒々しい木柱の群れを見せる戸谷さんの作品の隣に、つり下げられたビニールで作られた人形や円筒形の立体が揺れる木村幸恵さん(33)の作品があったりする。しかし、木村さんの作品を通り抜ける風さながらに、会場の雰囲気は何だか風通しがいいのだ。

 共催者でもある所沢市の当麻よし子・市長は「現代美術の不思議な空間に自分が入り込み、だいご味を実感した」と話した。カタログ執筆陣の一人、美術評論家の峯村敏明さんは、「絵画が展示しにくいなどの課題はあるが、純粋な思いから作家たちが率先し、若手と切磋(せっさ)する場を作ったのはいいこと」と評価。戸谷さんも、「若手が分派活動でもしてくれたら、面白い」とうれしそうだった。(大西若人)

   ◇

 12日まで。無料。電話080・3537・3021。

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

朝日いつかは名人会ガイド

第5回公演の模様を収録したオーディオブック(音声のみ、有料)をダウンロード販売中です!
落語はもちろん、会場の爆笑を呼んだトークのコーナーを含む全編収録版と、柳家喬太郎「一日署長」だけの真打ち版、あわせて2種類です。詳しくはこちらのページをご覧ください。
オーディオブックの発売にあわせて、ダイジェスト版の動画も、インターネット上に流しています。オーディオブックと同様、こちらのページをご覧ください。