現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 文化
  4. トピックス
  5. 記事

山本兼一さん「狂い咲き正宗」 刀剣商の裏、存分に

2008年9月9日14時42分

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

 日本刀は生死にかかわる武器であると同時に、収集され売買される美術品でもある。鷹匠(たかじょう)や鉄砲鍛冶(かじ)ら高い志と特別な技を持つ職人を主人公に歴史小説を書いてきた山本兼一さんが、江戸幕末を舞台に『狂い咲き正宗 刀剣商ちょうじ屋光三郎』(講談社)を刊行した。商いを軸に、刀剣の魅力と駆け引きたっぷりの裏の世界を見せてくれる。(吉村千彰)

 『狂い咲き正宗』は、遊女の身請けや旗本の跡継ぎ問題、収集家の裏切りや土産物屋の詐欺などに、「国広」や「虎徹」といった天下の名刀が絡まる人間ドラマだ。主人公は、将軍家の刀剣類を管理する御腰物(おこしのもの)奉行の長男勝光だが、刀剣商に婿入りし光三郎と名乗っている。とにかく刀剣が大好きで鑑定眼は鋭い。鎌倉時代の名匠正宗は実在しなかったのではと疑問をぶつけ、父に勘当された。

 刀には作り手の特徴が表れるが、正宗といわれる刀は一振りごとに表情が違う。かつて山本さんが取材した現代の刀匠河内國平親方が、「正宗は顔が見えへんのや」とつぶやいた一言が、本書執筆のきっかけとなった。

 江戸初期の刀鍛冶長曽祢虎徹をモデルにした『いっしん虎徹』(文芸春秋)で作刀については書ききった。今回は流通の裏側が披露される。「日本の心といわれる刀の世界の奥にある有象無象のもやもやは、物語の宝庫」

 学生の頃、古美術商の手伝いで競り市に出入りした。「うちで売ったら本物や」とうそぶく老舗(しにせ)古物商。「研いでるうちに正宗に見えてくるやろ」と決めつける刀剣商。だましだまされの武勇伝を聞いた。古物商の鑑札を持ち、今も市場に出入りする。直木賞候補になった『千両花嫁 とびきり屋見立て帖(ちょう)』では、古物商の夫婦を描いた。

 室町時代の古刀を持っていた。抜き身を掲げると、拳から人の生死を握る感覚が全身に伝わった。「日本刀は手に持てる哲学だと思います」。合戦で何人も切ったはずの刀は、結局手放した。「物より物を愛するマニアが面白い。ほんのわずかな差にこだわる執着心はすさまじい」

 光三郎のように封建社会の中で反骨の心を芯に持つ人物が活躍するのが、山本時代小説の特徴だ。「普通に生きる強い人を書いていきたい」

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

朝日いつかは名人会ガイド

第5回公演の模様を収録したオーディオブック(音声のみ、有料)をダウンロード販売中です!
落語はもちろん、会場の爆笑を呼んだトークのコーナーを含む全編収録版と、柳家喬太郎「一日署長」だけの真打ち版、あわせて2種類です。詳しくはこちらのページをご覧ください。
オーディオブックの発売にあわせて、ダイジェスト版の動画も、インターネット上に流しています。オーディオブックと同様、こちらのページをご覧ください。