山下新太郎「窓際」(1908年)
高橋由一に黒田清輝、浅井忠……。茨城県近代美術館の「明治の洋画」展には、日本の洋画の礎を築いた画家たちの約90点が並んでいる(23日まで)。「鮭(さけ)」や「湖畔」といった超有名作とはひと味違うものが多いが、見ると不思議な楽しさがわいてくる。それは「鑑賞」というテーマのせいでもある。
市川政憲・館長によれば、明治前期は、絵画も見せ物的に大勢でいっしょに見るものだったという。「由一の絵などは、わいわいと見たのではないか」。浅井らが明治美術会を作った明治20年代あたりから次第に、静かに見る鑑賞態度が生まれたという。
展示も、そんな変化に即している。第1章「イメージの共有」では、由一の「江の島図」や「不忍池」、原田直次郎「上野東照宮」といった名所を描いた作品や、弁慶、和気清麻呂といった人物を描いた作品が並ぶ。いずれも懸命に描いた雰囲気が伝わる作品で、「わいわい」言いながら見るのに最適の題材だろう。
満谷国四郎「戦の話」(1906年)も注目作。戦争帰りの男の話に、人々が聴き入る姿を描く。「こういう対話的な空間が、明治にはあったのだと思う」と市川館長。
一方、最終章「個の誕生」には、読書をする女性像が3点。一人静かに黙読し、本と向き合う姿は、近代的な美術鑑賞態度とも重なるものだ。
市川館長は「近代は作品・作家が主役で、観客はその名の通り『客』体だった。しかし近年、アートフェアで美術品を買う若者が増えるなど、受容者の復権の兆しもある」と語り、「公立館としては、さらに、美術館に来ない人とどうかかわるべきかも考えていかなければならない」と話していた。(大西若人)