動く映像とアートの関係を探る現代美術展が、東京都内の三つの美術館で開催中だ。最新の大型液晶プロジェクターなどを使った映像は、ドローイング(素描)、絵画、写真、パフォーマンスなどを取り込みながら、アートの新しい地平を見せる。(古賀太)
ドローイングと動く映像の近さに驚くのは、東京国立近代美術館(竹橋)の「エモーショナル・ドローイング」展だ。日本を含むアジア・中東の16人(組)の作家のドローイングと映像が並ぶ。
ドローイングは浮かんだアイデアを気軽に描きとめるのに便利だ。レイコイケムラは、水彩風の女性の顔を16枚、方形に並べる。同じ表情はない。その微妙な差異を眺めるうちに、まるで動く映像を見ているような気分にとらわれる。
同じ作家の映像作品(試作品、8分間)も、動と静の入り交じった感覚世界へ誘う。展示壁に顔のドローイングが映し出されるのだが、見ていると、数十秒ごとに異なる表情に移り変わっていく。
辻直之の映像は、紙の上に木炭で描いた絵を次々に流す。描かれた絵を消し、同じ紙の上に次の絵を描く手法のため、前の絵の跡がまるで影のように残り、不思議な手描きアニメになっている。ドローイングの差異と反復が、静でありながらも、無限に映像に近づいていく。
東京オペラシティアートギャラリー(初台)の「トレース・エレメンツ」展には、日豪の作家10人による写真や映像が並ぶ。古橋悌二の「LOVERS 永遠の恋人たち」は94年の作品だが、7台のプロジェクターを並べて360度に広がる構図は今見ても新しい。映るのは裸で歩く男女。自らの身体を使う松井智恵の映像やアレックス・デイヴィスのトリッキーな映像とともに、パフォーマンスに新たな意味を与える。
東京都写真美術館(恵比寿)の「液晶絵画」展にも、14人の映像作品が展示されている。サム・テイラー=ウッドの「スティル・ライフ」は、卓上の果物が腐食する過程を高速映像で見せる。
多摩美術大学で映像表現を教える西嶋憲生教授は、「従来の実験映像は表現方法の追求が主だったが、最近はアートの側から映像との境界領域を探る作品が多い」と言う。
▽3展とも10月13日まで(9月29日と10月6日は休み)。「エモーショナル・ドローイング」展は京都国立近代美術館に巡回する。