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トルコ遺跡 友好も発掘 カマン・カレホユック調査23年目

2008年10月4日12時26分

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写真調査が進むカマン・カレホユック遺跡。遺跡中央の日干しレンガの建物は約3750年前のアッシリア植民市時代の宮殿跡。発掘区の深さは7メートルにも達する=トルコ・カマン郡、宮代写す

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 中近東の古代史が専門の中近東文化センター(東京都三鷹市)による、トルコのカマン・カレホユック遺跡の発掘調査が23年目を迎えた。同センターは、オリエント学者でもある三笠宮崇仁殿下の肝いりで79年に発足した民間研究機関。一つの遺跡を辛抱強く掘り続けて世界最古の鋼(はがね)などを発見、中近東の先史時代像を書き換えてきた。国内外からの見学者も急増、日本とトルコの友好の懸け橋になりつつある。(宮代栄一)

■日本の機関 辛抱強く

 アナトリア半島中部にある首都アンカラから、車で南東へ約2時間。カマンという小さな町のはずれに、カマン・カレホユック遺跡はある。訪れた9月上旬、今年度の発掘調査は終盤を迎えていた。

 「このあたりは土器のかけらをまいて、道を舗装しているんですよ」。同センター付属アナトリア考古学研究所の松村公仁研究員が説明してくれた。複雑に入り組んだ石組み遺構の間に、細い道が走っている。約3750年前のアッシリア植民市時代のものらしい。踏みつけるのが急に怖くなった。

 カマン・カレホユックは、トルコ語で「カマンにある城壁の丘」という意味だ。丘全体が城壁のように見えることから、この名がついた。

 同センターが発掘に着手したのは85年。86年から本格的に取り組み始めた。

 アナトリア半島は、東西文明の十字路として知られ、シュリーマンが発掘したトロイなど、著名な遺跡も多い。外国の研究機関からの発掘申請も多いが、遺跡保護の観点からトルコ政府は極力制限している。「それまで調査の実績がなかった私たちに発掘許可が下りたのは奇跡のようなものだった」と、同考古学研究所の大村幸弘所長。

 以来二十数年。当初5人だった調査隊のメンバーは100人を超え、直径280メートル、高さ16メートルの丘に設けられた発掘区は左右へ広がった。現在、最も深い部分は前期青銅器時代後半(約4100年前)の層に達している。

 「この場所で、少なくとも60〜80回の建物の建て替えが行われた可能性が高い。それらの残骸(ざんがい)が積み上がった結果、いま見られるような丘になった。最も古い文化層は9千年以上前の新石器時代までさかのぼるはず」(大村所長)

■地元と共存 高い評価

 同調査隊は、これまでに数々の発見を成し遂げている。一つは、世界最古の鋼を見つけたことだ。

 01〜02年に出土した3点の鉄片が、粘土板文書や炭化物の放射性炭素年代などから、紀元前22〜20世紀のものとわかった。世界史の教科書などでは、鉄器を使い始めたのは、同じアナトリア半島のヒッタイト帝国とされているが、それを800年もさかのぼる。ヒッタイト以前に、同半島で独自に鉄生産が始まっていた可能性が高まった。

 このほか、ヒッタイト滅亡後のいわゆる「暗黒時代」に、高いレベルの文化が栄えていたことを明らかにするなど、欧米の調査隊も注目する成果をあげた。

 「同じ場所を動かず、細かな文化層を把握しながら発掘してきたことが大きい」と専門家はみる。

 とはいえ、同遺跡の調査はまだ中途だ。このため日本国内で寄付を募り、12億円かけて現地に新たな研究施設を造った。来春オープンする。

 隣接地で、日本のODAで建設が進むカマン・カレホユック考古博物館(仮称)はトルコの日本年にあたる2010年開館の予定だ。「現場近くに恒久的な研究施設を設け、成果を見せる博物館まで造る。外国の調査隊としては理想的な形」と、現地を訪れた前田耕作・和光大名誉教授(アジア文化史)は高く評価する。

 研究者育成にも力を入れる。調査隊メンバーの3分の1近くは外国人だ。地元トルコのほか、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどから人類学、動物考古学、植物考古学、保存科学などの専門家が参加。調査隊では、彼らを講師として毎夏、発掘や保存修復のやり方などを教える「考古学フィールドコース」を実施し、国籍にこだわらず、国際的な視野を持った若手学者の育成を目指している。

 「現地でここまで熱心に若手研究者の養成をしている調査隊はありません」と、トルコ考古学の権威であるニメット・オズギュッチ元アンカラ大教授は話した。

 大村所長は「一番下の文化層に達するにはあと30年はかかるだろう。トルコの皆さんの協力を得、地元と共存する形で、腰を据えて調査を続けていきたい」と話している。

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