広告業界などに配られる誌面内容を見せる資料
帝国ホテルで開かれた新女性誌「GINGER」(幻冬舎)の発表会風景
老舗(しにせ)の看板雑誌も含めた休刊ラッシュが続く出版業界。そのなかで、新しい雑誌を出す動きも出始めている。逆風をついて新媒体に挑戦するのはなぜか。雑誌の現場でいま何が起きているのか。
10月1日、東京・内幸町の帝国ホテルで、幻冬舎の新女性誌「GINGER(ジンジャー)」(来年3月創刊)の発表会が開かれた。壇上に立った見城徹社長は「今回の創刊は大勝負。逆風が吹いているが、それをついて出ていくのが幻冬舎らしい!」とぶち上げた。
今年の夏以降、出版社の屋台骨を支えた雑誌の休刊が発表されるたびに、業界に衝撃が走った。休刊の連鎖は今も続き、今週は「読売ウイークリー」「マミイ」の休刊が発表された。
大手出版社はなかなか反転攻勢できない。「ロードショー」や「PLAYBOY日本版」の休刊を発表した集英社は「既存誌を読者目線で見直すのが一番の重要作業。来春まで創刊の計画はない」という。「月刊現代」などを休刊する講談社も新雑誌研究チームを立ち上げたが、「まだ発表時期ではない。春先まで創刊はない」。宣伝費の大幅削減も検討中で守りの状態が続く。
一方で、新創刊の動きも出始めた。
小学館は今月26日、隔月誌「プラチナ サライ」を創刊する。ビジネスの第一線で働く「エグゼクティブ向けのライフスタイル誌」で、目標は10万部。小林慎一郎編集長は「休刊が続く今だからこそ、我々が新しい市場をつくる」と意気込む。同社は6日に「メンズプレシャス」も増刊号として刊行。新しい男性ファッション誌の創刊も模索する。
マガジンハウスは看板雑誌名を冠につけたムック「ポパイ・クラシック OilyBoy(オイリーボーイ)」を12月3日に発売。「大人のポパイ」(雑誌準備室の菅野正美編集長)で新市場を探る。
飽和状態の女性誌市場にも動きがある。扶桑社は来春、2誌を創刊する。「EFiL(エフィル)」は40〜50代の女性、「amarena(アマレーナ)」は30代後半のキャリア女性がターゲットだ。コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパンも「27歳の働く女性」向けの「GLAMOUR」を7月に創刊する。
なぜいま新雑誌なのか。
「既存誌が閉じられ、新しいものを開ける時期」と語るのは「GLAMOUR」の軍地彩弓編集長。「GINGER」の片山裕美編集長も「新しいコンテンツがないから女性誌が読まれなくなった。女性の心に忍び寄る雑誌をつくりたい」と戦略を語る。
■業界縮小に危機感
出版業界や会社が「シュリンク(収縮)」することへの危機感も漂う。扶桑社の執行役員も兼任する坂口明子「EFiL」編集長は「業界が縮小する中、新しい挑戦が大切というトップ判断があった」と明かす。小学館の山岸博取締役も「休刊だけでは会社が小さくなる一方。新しい芽を後輩に渡さないと」と語る。
新雑誌は「軌道に乗るには3年かかる」と言われ、さらに「雑誌が1冊無くなると編集者の行き場の確保も大変」(大手出版社の中堅社員)。「先行投資」が滞れば先行きは細るばかりだ。
逆風の中の新創刊は業界を救う起爆剤になるか。雑誌に詳しいフリー編集者の仲俣暁生さんは「追い詰められた時がチャンスなのに新機軸がない。残った広告のパイをシビアに取り合う印象だ。雑誌は面白いものと思っていない若者向けに『再配分』があってもいいのに」と厳しい。
前出の山岸取締役は「我々は雑誌をあきらめていない」と語るが、景気悪化で広告収入が減る中、今後も休刊が続けば、出版社の体力は確実に奪われる。
出版界は「やる気」と「体力」を天秤(てんびん)にかける新たな時代に突入した。(竹端直樹、浜田奈美)