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神社「下半身どろり」現代アート 街へ拡散

2008年11月4日11時28分

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写真八谷和彦による飛ぶアート。これも「展示」だ=金沢市の市民芸術村

写真漆を塗り重ねた漆黒のかたまりから垂れ下がる下半身=金沢市の椿原天満宮

 美術館を拠点に、周辺のあちこちで美術作品を展示する。そんな試みが広がっている。展示される現代アートは、街の活性化を担い、見る人を刺激し、神社や公園、商店街へと拡散していく。(秋山亮太)

 金沢市。犀川沿いに広がる市民芸術村の芝生を、風が西から東に吹き抜ける。秋空の下、市民の有志がグライダーに似た「飛行装置」を、まさに飛ばそうとしている。100メートルほどあるゴムひもを引っ張ると、機体はふわっと10メートル近く浮き上がった。

 装置は、宮崎駿監督のアニメ映画「風の谷のナウシカ」で主人公の少女が操る機体「メーヴェ」に似ている。八谷和彦が「個人的に飛行装置をつくる」ことを目ざし5年前に始めたプロジェクト。「ひらけ! そら」の思いを込めて「オープンスカイ」と呼んでいる。これも市民参加型の「展示」だ。

 同じ市内の椿原天満宮では、丸太の先から人間の下半身が垂れ落ちたような作品が、天井から下がっている。発泡スチロールに麻布を重ね、漆を塗った。地元の輪島塗と似た質感。厳かな空間に、したたり落ちんばかりの生々しさが凝縮されている。金沢美術工芸大大学院生・青木千絵が制作した。

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 美術館やギャラリーという場にとらわれない、こうした展示を、19組の作家が市内各所で12月7日まで続ける。金沢21世紀美術館が「アートプラットホーム」と名づけて今年始めた。秋元雄史館長は「美術館に閉じこもらず、地域との対話を求め、関係を豊かにしたい」と話す。3年に1回開く「トリエンナーレ」に育てる予定だ。

 街中の展示を通して地域と対話する――その手法の先輩格は、茨城県の水戸芸術館だ。今年で3回目になるアートプロジェクト「カフェ・イン・水戸」が24日まで開催中。水戸市の店舗や商業ビルなどで、芸術館と市民が協力して企画展示をする。

 芸術館の本体では「日常の喜び」と題し、作家14組の作品展を開いている。このうち4人が芸術館の外で「カフェ〜」の企画に参加し、館の内外をつなぐ役割を果たしている。

 例えば大巻伸嗣の作品。館内には、型抜きされた白い花々が床に散っている。花の上には水晶の粉がまかれ、来場者が踏むと陰影が変わる。ところが、美術館の外に出て、すぐ近くの「カフェ〜」の展示スペースに立ち寄ると、同じ大巻の花の作品が、カラフルに彩色されている。

 森司主任学芸員は「現代美術は作家が生きていることが強み。様々な制作が可能だから、人とアートと街が色々な角度でまじわれる」と話す。

 東京で開いた「アートリンク上野――谷中」(10月19日で終了)は、街中でのアート展示が今年で12回目。上野の美術館集積地から周辺の谷中・千駄木かいわいまで、古い街並みが残る一帯が会場となった。「フェルメール展」(東京都美術館)や「ヴィルヘルム・ハンマースホイ展」(国立西洋美術館)などから谷中のギャラリーなどに流れる人も多かった。

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 「アートリンク」を発案した窪田研二さんは今年、東京・赤坂の旧小学校の体育館や元料亭などで現代アート作品を展示する「赤坂アートフラワー08」(10月13日で終了)を企画した。「10年前は、現代アートを街の活性化に使う発想は企業や行政にほとんどなかった。引っ張りだこになったのは、ここ数年のこと」と言う。

 作品の持つ毒や批評性で、見る者を刺激する現代アートが、バブルともいわれる近年のアート市場の活況で親しみやすくなった。これが、アートが街に出た背景だ。

 文化庁は、点在する美術館や博物館が地域に開かれ、親しまれるための「ミュージアムタウン構想」を昨年度から進める。今年は埼玉県立近代美術館や川越市立美術館など、埼玉県内の五つのミュージアムが連携するワークショップや展示を実施。16日には北浦和公園で1500本近い風車を並べる「アートの風」の展示も行う。官民あげての現代アートの拡散は、しばらく続きそうだ。

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