都会の風景の“原型”を感じさせる展覧会が二つ、東京で開かれている。東京都庭園美術館(港区)で開催中の「1930年代・東京」展と、ブリヂストン美術館(中央区)の「都市の表象と心象 近代画家・版画家たちが描いたパリ」展だ。東京、そしてパリ。時代も地域も異なる両展を通じて、現代につながる都市生活の愉楽と孤独が見いだせる。
「1930年代・東京」展は、絵画や写真、絵はがきなど約230点を紹介する。目につくのは新しい町並みとそこを歩く男女、とりわけ女性たちの、見られることを意識した自信に満ちた姿だ。師岡宏次の「銀座、女性たち」(35年)は、最新の洋装や和装に身を包んだ女性たちが銀座・鳩居堂前を堂々と歩く姿をとらえている。
関東大震災(23年)から復興した新しい都市と、それを楽しむ人々。30年の「大東京写真帖(ちょう)」や35年の「建築の東京」といった本や雑誌などの展示からも、建築の美と都市風俗を誇る意志が見える。
会場の庭園美術館は、33年に朝香宮邸としてつくられたアールデコの建物。パリ万国博(25年)を訪れた朝香宮夫妻が要望し、流行様式を採り入れた。和装の女性を描く武藤嘉門の絵画「ショーウインドウ」(37年)も、会場では同時代の館内装飾と響きあう。
「都市の表象と心象」展は19世紀後半のパリがテーマ。フランスの作家たちによる版画など約50点が並ぶ。
19世紀半ば、セーヌ県知事オスマンが入り組んだ路地を取り壊して大通りを整備し、現在のパリの原型ができたと言われる。展覧会で描かれるのは、生まれ変わったパリとそこで生活する人々だ。
ポール・ガバルニのリトグラフ「ダプレ・ナチュール(実物)・こんな奥さんたちの為(ため)だよ。パリの往来を広げるのは」(1857〜58年)は、大通りを歩くおしゃれな女性とそれをにらむ老婆を描く。誕生したのはベンヤミンが「遊歩者のまなざし」と名付けた、“見る”ことと“見られる”ことが交差する都市空間だ。
「1930年代・東京」展を企画した高波眞知子・学芸担当課長は、「街が一新することで人々の心が明るくなり、新しい美学が生まれるのは、東京にもパリにも当てはまるだろう」と語る。
新しい建物ができるたびに大勢が繰り出す現代人の原点を見るような展覧会だ。(古賀太)
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「1930年代・東京」展は1月12日まで、第2・第4水曜休み。「都市の表象と心象」展は同18日まで、月曜(休日の場合は翌日)休み。共に年末年始休み。