現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 文化
  4. トピックス
  5. 記事

アートな団地、展示中 茨城・取手井野団地

2008年11月13日10時38分

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真子供用プールを使った、奥健祐+鈴木雄介「井野団地足湯プロジェクト」

写真取手井野団地の敷地模型がテーブルになった、みかんぐみによるカフェ

写真日本大学佐藤慎也研究室「+1人/日」で生まれた4段ベッド

 「電気・ガス・水道・アート完備」。新手のマンション登場?と思わせる惹句(じゃっく)を掲げたアートイベントが、茨城県取手市の取手井野団地で展開されている。築約40年の団地にアーティストが住み込んで制作するという、ほとんど前例のない試み。そこから生まれた作品が、建物の内外で展示されている。「団地鑑賞」ブームに対して、アートを介しての「団地体験」が味わえる。

 「待てっ!」。子供たちがマゲのような髪形の参加作家を追い回す。最大で約1カ月住み込んでいただけに、彼らはおなじみの存在なのだ。

 取手市と、同市内に先端芸術表現科を置く東京芸術大、市民による「取手アートプロジェクト(TAP)2008」の最大の特徴は、この住み込み制作だろう。約90棟に約2100世帯6千人が暮らす団地内で、2DK〜3DKの空き住戸に23組が暮らした。

 プロデューサー役を務める建築家ユニット「みかんぐみ」を中心に公募で作家を選んだほか、ゲストや韓国からの参加もある。

 実施本部長の渡辺好明・同大教授によれば、TAPは99年以来、生活とアートをつなぐ目的で毎年開催している。昨年末に、市と大学にUR都市機構(旧・住宅公団)が協力し、空き店舗があった団地内の旧ショッピングセンターを共同アトリエに改修したことから、団地での開催につながった。

 団地を管理する茨城住宅管理協会も、団地の存在を若い人が知ってくれそうな文化事業なら、と協力。家賃は実行委員会が払っている。

 「団地に住み込み」は初めての試みだが、渡辺教授は、「まさに生活のただ中で実現しました」と話す。

 屋外では、芝生の上の針金ドームや、子供用の浅いプールを利用した足湯などに人が集まる。団地で使われた家具などを板材にしたステージも登場。みかんぐみが中心となって、樹木の下の図書室も生まれた。

 中層の住棟間は、意外に余裕があって緑にあふれる。そんな空間を、改めて読み込むような作品が多い。みかんぐみは銀行の出張所跡を改装しカフェに。団地の敷地模型が大テーブルになっている。

 一方、住戸内の展示。架空の祭壇を作ったゲスト作家の齋藤芽生さんは7歳まで団地暮らしだった。「コンパクトさがいいですね。また住みたくなりました」と話す。お茶を飲みながら、作家とゲームをするような気楽な展示があれば、便器や流し台を「照明器具」に変えた幻想的な作品や、外国人登録証や記憶がテーマのシリアスな表現も。

 驚きは、日本大学佐藤慎也研究室(建築学科)の「+1人/日」。3Kの部屋に暮らす人数を1日1人ずつ増やす企画で、最終日は佐藤・助教が加わり、23人になった。少しずつ寝場所を作り、最後は4段ベッドに。鑑賞者はその空間を実体験できる。

 佐藤さんは「最初にすべてを計画する建築とは違う。それに、人間は結構慣れる」。

 団地には、多くの人が暮らし、子供たちが走り回る。分かりやすい「活性化」といったお題目は成立しにくい。

 針金ドームを作った奥中章人さんは、「皆さん温かくて、『何してるの?』『ご苦労様』と話しかけてくれた」と語り、子供たちのために即席ワークショップも開いた。一方、団地に38年間暮らす女性は、「何かやっていると刺激になるし、好意的に見ている人が多いと思います。私はカフェが気に入っています」と話した。

 この企画には、お題目ではなく、生活のなかでアートやアーティストに何ができるかを、純粋に探る気分がある。その純粋さが、心地よい。

 UR都市機構東日本支社総務企画部では、「今後、ほかの団地でも相談があれば、検討したい」としている。(大西若人)

 ◇残りの会期は14〜16日。HPはhttp://www.toride-ap.gr.jp/

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

朝日いつかは名人会ガイド

第5回公演の模様を収録したオーディオブック(音声のみ、有料)をダウンロード販売中です!
落語はもちろん、会場の爆笑を呼んだトークのコーナーを含む全編収録版と、柳家喬太郎「一日署長」だけの真打ち版、あわせて2種類です。詳しくはこちらのページをご覧ください。
オーディオブックの発売にあわせて、ダイジェスト版の動画も、インターネット上に流しています。オーディオブックと同様、こちらのページをご覧ください。