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可能性広げる姿勢共通 第9回東京フィルメックス

2008年12月7日11時22分

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 第9回東京フィルメックスが先月30日に閉幕した。コンペティション部門の最高賞は初のアニメーション作品、第2席は劇映画とドキュメンタリー。受賞作品のジャンルは多岐にわたるが、映画の可能性を広げようする果敢な姿勢は共通していた。

 最優秀作品賞の「バシールとワルツを」は、「セイント・クララ」が日本公開されたイスラエル人監督アリ・フォルマンの最新作。80年代のレバノン侵攻に従軍した自身の体験をもとに、戦争が残す傷の深さを描き出す。封印したはずの戦場の記憶にさいなまれる元兵士たち。その証言と変幻自在のアニメを絡め、リアルな実写映画では描けぬ恐怖を生々しく伝えた。

 第2席の審査員特別賞は初めて2作品が受賞した。「木のない山」は、幼少期に米国に移住した女性監督ソヨン・キムが故郷・韓国で撮った劇映画。家庭崩壊で親類の家に預けられた幼い姉妹が、不安定な生活のなかで成長していく姿を見つめる。詩情と冷徹なリアリティーの共存は、是枝裕和監督の「誰も知らない」に通じるものがあった。

 もう一本は中国の于広義(ユー・グァンイー)監督が自主製作したドキュメンタリー「サバイバル・ソング」。昨年の出品作「最後の木こりたち」に続き、故郷・黒竜江省の山が舞台。廃村のあばらやで自給自足の生活をする無職夫婦の元に住み込み、下働きの中年男の日常を丹念に記録した。繁栄から置き去りにされた最底辺の生活と、周囲の自然の荘厳な美との対比が深い感銘を残した。

 他にも、中国の新人・周耀武(チョウ・ヤオウー)の「黄瓜(きゅうり)」や、カザフスタンのダルジャン・オミルバエフが「アンナ・カレーニナ」を大胆に翻案した「ショーガ」も賞に絡んでいい見ごたえ。日本からも2作品が参加したが、「演出は達者で役者もうまいが、訴えてくるものが弱い」と審査委員長の野上照代さん。「伝えなければ」という切実な思いをストレートに打ち出す作品群の中で、繊細な表現に意を尽くした日本映画は線が細く見えた。

 今年出品された外国映画はすべて公開未定。9年間で初めてのことだという。アート系映画市場の冷え込みを実感させる。その分、世界の多様な映画と出会う場としてこの映画祭の存在意義は増している。ただし、ここを「終点」にしてはなるまい。「バシールとワルツを」や「木のない山」は一般公開を望む観客の声を何度も聞いた。実現してほしい。(深津純子)

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