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『ナイン・ストーリーズ』を柴田元幸さんが新訳

2008年12月16日10時58分

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写真柴田元幸さん

 J・D・サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』を翻訳家で東大教授の柴田元幸さんが新しく訳出し、責任編集している雑誌「モンキービジネス」第3号(ヴィレッジブックス)に掲載した。これまでに野崎孝訳(新潮文庫、初版74年)、中川敏訳(「九つの物語」集英社文庫、初版77年)など数種類の邦訳があるが、柴田さんは「会話の文章はさすがに古びる。ときどきバージョンアップされるべき作品なので、とてもいい機会になった」という。

 今回の新訳は契約交渉の「副産物」だったという。今年4月発行の同誌創刊号で、『ナイン〜』の冒頭の作品「バナナフィッシュ日和」の新訳を計画したが、サリンジャー側から、九つの作品を切り離してはいけないと条件がついた。いったんあきらめかけたが、「だったら九つとも訳しましょう」という編集部内の声に押されて全訳が誕生した。

 これまでの邦訳について、「この言い方はさすがに今はしないよなと思う部分もある。いつの時代であれ、半歩先を行っている自意識過剰な若者が多いのだから、08年の若者の話し方を意識して訳した」という。同時に「私の翻訳のなかでも、一番早く古びると思う。流行語を使おうなどと考えたわけではないが、今の空気のなかで、ちょっとビリビリした若者ならこう言うだろうなと思って訳した。それは、あっというまに古びるということでもある」と話す。

 掲載誌には、サリンジャー側から、著者の紹介や「あとがき」などは一切載せてはいけないという条件もついた。そこで、急きょ「第3・5号」を別に発行して特集を組んだ。柴田さんと岡田利規さんとの対談や、川上未映子さんの散文詩「バナナフィッシュにうってつけだった日」、米国の編集者ローランド・ケルツさんのエッセー「『ナイン・ストーリーズ』とストーリーテラーの死」を掲載している。

 今回の新訳で、初めて『ナイン〜』を読む若者もいるに違いない。どう読まれるだろうか。

 「訳文は古びるかもしれないが、作品は常に新しい。いつの時代も、今ここにいることにしっくりこない若者はいる。サリンジャー作品にはパズルのように解ける謎ではなく、生きているとわけのわからないこともあるよな、という謎がある。そういう意味では、今も読まれるべき普遍的な作品です」

 来年、サリンジャーは90歳。動静は伝わってこないが、作品は生き生きと伝わってくる。(都築和人)

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