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ランドスケープ―柴田敏雄展 大地に刻まれたパターンへの感性

2009年1月7日14時54分

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写真柴田敏雄「愛媛県今治市」(07年)

写真柴田敏雄「宮崎県西都市」(90年)

 カメラを積んだ車を山間部に走らせ、コンクリートのダムや擁壁を撮れば、柴田敏雄風の写真になるかもしれない。でも、それはあくまでも柴田風。実際の柴田作品に届き得ないことは、約70点による回顧的な個展を見れば分かる。

 といっても展示は年代順ではない。前半は06年以降のカラー作品24点が中心で、ダムや鉄橋、水路といった人工物と自然がせめぎ合い、あるいは共存する場所が、主観を排し大画面に納められる。

 ここまでなら、技術を磨けば近づけるかもしれない。しかし、何の変哲もない風景に、社会構造とある種の美を同時に見いだしてしまう「発見力」は簡単にはまねできない。例えば「愛媛県今治市」(07年)。本来は無粋極まりないコンクリート護岸を持つ水路が、リズミカルに段差を連ねて曲線を描く姿は実に軽快。その描線と、棚田が描く直線のパターンの呼応は絶妙というほかない。

 そう、パターンへの感性。それは、木村伊兵衛写真賞を受けた「日本典型」シリーズなどのモノクロ写真を見ると、一層よく分かる。擁壁やブロックの反復がきめ細かい白と黒の濃淡で描かれ、幾何性が強調されているのだ。

 大地に刻まれた細部のパターンをとらえ、日本全土がこうした土木構造物に覆われている事実に気づかせると同時に、その精巧な造作に引かれてしまう美意識の存在を、昨今の「工場萌(も)え」などのはるか以前から発見していたのだ。

 そしてカラー作品を見直すと、そこに色彩と質感のパターンが加わり、ぬくもりと懐の深さにつながっていることが分かる。49年生まれの柴田は、東京芸術大では絵画を学んでいるが、その経験が生かされているのかもしれない。

 まねできそうに見えるのは、表現が明確な輪郭を備えている証しだろう。でもまねできないとしたら、表現がもっと深い構造を備えている証しだ。(大西若人)

 ◇2月8日まで、東京都写真美術館。月曜(祝日の場合は翌日)休館。ほかに、1月25日まで東京都小金井市緑町2の14の35の双ギャラリー、同31日まで東京・南青山1の26の4のギャラリー・アートアンリミテッドでも個展。

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