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「法の精神失った中世」描く 塩野七生氏が新著

2009年1月11日11時23分

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 『ローマ人の物語』を2年前に完結した塩野七生さんが新著『ローマ亡き後の地中海世界』(新潮社)を刊行した。古代ローマの時代からルネサンス期を含めた2500年に及ぶ歴史を書いてきた中で、「ところどころにすき間ができたので、それを埋めていこうと中世を書いた」という。

 ローマ帝国崩壊後の地中海世界は、どうなったのか。「ローマ帝国がなくなったということは、すべての人々を律するルールが失われ、法の精神がなくなったということ。考えの違う人間でも、ともに生きていく世界なのだから最小限のルールが必要で、それを守ろうという倫理観がなくなったのが中世」と位置づける。

 キリスト教世界とイスラム教世界の二つに分かれた中世を、塩野さんは、イスラム化した北アフリカを拠点にキリスト教社会への略奪と拉致を繰り返す「海賊」を切り口にして描いた。

 「イスラム教の側はイスラム側の考えで、キリスト教の側はキリスト側の考えで行動する。そこに、海賊が出現した」

 海賊に拉致されたキリスト教徒を救出するために救出修道会や救出騎士団が結成される。「なんてすてきな男たちだろう、彼らにこそノーベル平和賞を上げるべきだと思った」という。「現代からみて書くのではなく、なるべく自分を白紙の状態にして、あの時代に生きた人はどのようなことを大切にしていたかなど、そこに生きていた人の気分になって書くのは楽しかった」

 宗教を背景とする対立・衝突は、現代も激しさを増すばかりで絶えることがない。

 「世界各地で、どちらかに分かれて衝突している。なぜ対話できないかと日本人は思うが、イスラム教世界とキリスト教世界の間には千年以上にわたる争いの歴史があったことを知ってほしい。過去の苦しみへの認識なくして、単に仲良くしましょうではうまくいかない。彼らの歴史や文明を認識し、何ができるかの提案をすべきでしょう」

 上巻は刊行中、下巻は30日に刊行予定。(都築和人)

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